20
氷帝の練習が終わってから、跡部に立海に送ろうかと言われたが断って電車で立海に戻った。
戻った時は部室からレギュラーと桜井さんがまだ残っていて談笑しているのが声で伺えた。
部室にどのタイミングで入ろうか扉の前で悩んでいたら足音が聞こえたので振り返る。
「丸井…?」 見慣れた赤髪が目に入り、顔を見たらやはり制服姿の丸井だった。
お互いに少し驚いて「おかえり」「ただいま」のやり取りをした。
「氷帝も練習終わったのか。 つーか中に入んねーの?」 「うん、今から入ろうとしてたとこ。
…今日の練習どうだった?」
あまり今は入りたくなくて丸井に聞き返す。
察したのか、丸井は私の腕を取りコートのベンチに移動した。
「まあ練習は普段と変わらずだったぜぃ。 本当、渚は仕事出来るやつだよなー。」
思い返すように斜め上に目を向けながらガムを口に含んだ。
桜井さんの名前を出した時に私を見て表情をニコニコと笑顔に変えた。
その動作と言葉に 私はもう部活に必要のないマネージャーなんじゃないのか?って頭に浮かんだ。
桜井さんさえ居れば、マネージャーも成り立つし士気も断然上がると思う。
そうなれば私は居ても居なくても問題ない。
そもそも今年でいなくなる存在なのだから。
黙り続ける私を不審に思ったのか気付けば丸井が自分のおでこを私のおでこにくっつけていた。 「んー?熱は…ねぇな。 氷帝までの往復とマネージャーの仕事で疲れたのか?」 「や、大丈夫。 氷帝の練習内容を思い出したら呆けてたみたい。」
おでこを話した丸井に誤魔化すように苦笑いをした。 疲れてないと言えば嘘になるけど、私には疲れより桜井さんのことでいっぱいいっぱいだった。
「お、そうそう。 氷帝の練習ってどんな感じだった?」
誤魔化す事は出来たらしく、丸井は興味を私から氷帝て変えた。 私は氷帝での練習内容と風景を分かる限り話した。
それこそ部室の広さやファンの多さに至るまで。
|