19
「そういや、名前は高校どうすんのー?」
「うーん、そのまま上がろうと思ってたけど…。 今は別の高校受けようかなって思ってるかな。」
まさに今思い付いたかのようにおもむろに尋ねられた。
本当は弦一郎がそのまま立海に上がるのはわかっていたから、私も側にいようと思っていた。
でも今はあの子がいるから、弦一郎と桜井さんの絵は見たくない。
だから、今は高校をどこにしようか悩み中。
…逃げてるなんて百も承知。
「え、そーなの? なら氷帝に来たらEじゃんっ。」
ぱあっと絵に書いたかような笑顔を見せて、私の腕を掴んだ。
「氷帝かあ…。 氷帝の編入って難しそうだよね。」 「あーん? 簡単だろうが、入ったらお前マネージャーだがな。」
立海の授業を追い付くのでいっぱいな私には編入試験というハードルが高いものは厳しい。
うーん、と困った顔をすれば跡部が俺様発言をかました。
そりゃあ英才教育を受けた跡部には簡単だろう。
ていうか、マネージャー強制って…
呆れて物も言えずに黙って跡部に冷めた視線を送った。
「それ良いじゃん! さすが、跡部だC。」
私と真逆の尊敬の眼差しを跡部に向けた芥川君は
「そうしなよー?」と良いながら私の体を揺らした。
「うー、考えとくけど。 ていうか氷帝はマネージャーはとらない主義じゃない。」 「俺様が規則だ、ルールだ。 そもそも主義なだけで絶対とらない訳じゃねぇ。」
至極当然だとせせら笑いを浮かべた跡部は勉強は出来ても頭は良くないと思った。
そんな跡部に尊敬の眼差しを向ける芥川君も同類だ、同類。
「さて、練習再開するか。 ジローは俺と打ち合いだ。」
「えーっ!? 跡部容赦ねーじゃん!」
跡部は芥川君を引きずりながら 芥川君の言葉を華麗に無視して部員に練習再開の合図を送った。
私は皆が飲んだドリンクのボトルを集めて部室に洗って置いた。
氷帝の練習風景は当たり前だけど、うちとは違うやり方だった。
同じ実力主義でもこうも違うものなんだ、氷帝が完璧な実力主義だと再確認した。
|