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「じゃあ、幸村の判断は正しかったんだな。 今年で俺ら3年は引退、マネージャーも例外じゃねぇ。」 「そうなるね。 私以上に仕事出来るようになるよ、あの子は。」
忍足君がコートに戻って向日君とラリーをし出したのを横目に先ほどの続きを話していた。
確かに、幸村君は正しかった。
マネージャーの跡継ぎは必要だから。
あの子なら任せられる。
そう言葉にしたら無性に悲しくなって胸が…痛い。
「けど、先輩方がいなくれば寂しくなりますね。」
「馬鹿野郎。 新入部員が入ればそんな事考えてる暇はねぇぞ。」
しゅん、とした鳳君に宍戸君が渇を入れた。 確か私も2年、3年となる前に同じような事を思ったけど、いざなれば忙しい日々で考える暇もなかった。
来年の今頃も今の寂しい気持ちもなくなっているだろうか…。
そうだとしたら…、私の中からも弦一郎の中からもお互いの存在は過去のものになる?
…そんなの寂しい。
「あーっ!名前じゃん! え、何々?どうしたんだCー!」 いきなり明るい声が聞こえて、驚きながら声の主を探せば綺麗な蜂蜜色のふんわりとした髪をした芥川君だった。
「うるせーやつが目ェ覚ましやがったな。」 「宍戸君…。」
ぼそりとめんどくさそうに宍戸君が呟くものだから、思わず笑ってしまった。
タタタタッと芥川君はこちらに走りよりドリンクを受け取った。
「おい、こら。 お前は練習してねぇだろうが。」 「えー、細かい事言うなよ!」 キラリと目を光らせ跡部が芥川君の頭をコツンと小突いた。
頭を擦りながら芥川君は跡部を見上げ、口を尖らせていた。
思い返せば確かに彼はコートにいなかった。
居眠りの為のサボりは今も健在らしい。
「長太郎、俺らも練習再開するか。」 「はい! では名字先輩、また後程。」
宍戸君に呼ばれて鳳君も会釈しながらコートに向かった。
残ったのは跡部と芥川君と樺地君、それから私。
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