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翌朝、いつものようにロッカーにある嫌がらせの数々を片付けようとしたら拍子抜けしてしまった。
ロッカーが普通だった。
しかし、私の今までの普通ではなかった。
つまり、嫌がらせ一つない綺麗なロッカーだった。
何度バタバタと開け閉めして確認しても、それは変わらなかった。
「なんで…?」
ふと、桜井さんが思い浮かんだ。
テニスコートで堂々と弦一郎に告白し、即日マネージャーになった彼女。
その日から帰りも一緒だった…。
標的が私から桜井さんになった?
はたから見たら二人は付き合ったように見える。
かたや私は惨めな幼なじみにうつったとしたら… 嫌がらせ対象を増やすのではなく桜井さんにだけした気持ちが分かる。
確信は桜井さんのロッカーを見れば得られる。
思わずくすりと笑みが溢れた。
二年のロッカーに向かおうとしたが、それは出来なかった。
仁王がいつの間にか後ろに立っていたから。
仁王と目がバチリとあった。 目があった仁王はにっこりと笑った。
「おはようさん。」 「お、おは…よう。」 「なんじゃ、お前さん。 いつも部室じゃなくこっちに先に来とるんか?」
ドキリとした。
そういえば…と、昨日も仁王とここで会ったのを思い出した。
「うん。 なんか、癖みたいなもので。」 「ほぅ。さよか。」
仁王は興味がなくなったのかスタスタとおもむろに部室の方角へ足を進め出した。
正直今はその性格に助かった。
「ほれ、名字も行くぜよ。」 「あ、うん。」
そう言われては断りようがなく、確認はおわずけとなった。
でも多分、私の予想は当たってると思う。
それなら少しは桜井さんに感謝しちゃう。
部室の前に差し掛かった時に弦一郎の姿を見付けた。
…それと隣にいる桜井さんも。
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