04
「そうやって遊び過ぎたら本気で好きな人に気持ち伝わらないよ?」
「えー、大丈夫ッスよ! 俺は恋愛に本気にならないんで。」
「ずっとそうとは限らないよ。 感情に永遠や絶対ってないと思うし。」
今まで遊びまわる三人にこんなふうに説教じみたことをしたことは無かった。
でも、今朝のあれを見たらあやふやな関係って脆いって良く分かったから。
だから無意識に言葉が出てて、言葉にした途端に無性に泣きたくなった。
「名字先輩どうかしたんスか? なんかいつもと違っ…え、ちょっ…。」
我慢してみても生理的に溢れる涙は止まってくれず 私は後輩の赤也の前で泣いてしまっていた。
赤也はあたふたと慌てて、あるはずもないハンカチを探してポケットを探ったりしている。
なんだが、それがおかしくて泣きながら笑ってしまった。
「あははっ! 赤也ってば慌て過ぎだよ。 ごめんね、今ちょっと泣きたい気分みたい。」
いきなり泣き出したかと思えばすぐ笑い出す私に赤也ポカンと固まっていた。
気持ちは分かる。 私だってこんな事目の前でされたら対処に困るだろうから。
「ほら、赤也は今からでも授業行ってきな。 私は部活までここで気持ちを落ち着かせるから。」
「…でも……いえ、わかりました。 部活、絶対に出て下さいよ。」 「うん。」
少し不服そうに屋上から屋内に入っていく赤也を見届けてから 少し横になろうと夢の世界に入った。
夢の中で私はシンデラになって弦一郎と踊った。 12時の鐘がなって魔法が解けるのではなく、桜井 渚が現れて私と入れ替わった。
夢の世界ですら現れたあの子。
弦一郎の側にいるあの子は勝ち誇った顔で私を見ていた。
夢の私は魔法使い姿の仁王に頼んで彼女を魔法で醜い姿にさせて、にこやかに笑っていた。
それをシンデラの継母の幸村君も 姉である丸井も赤也も一緒になって笑って見ていた。
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