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一通り話終えて、しばしの沈黙を精ちゃんが破った。
「…一通り聞いて、理解したかい?」 「…は、い。」
赤也くんは顔を上げようとはせずにずっと俯いている。
「つまりは赤也を襲った黒幕は電話口の相手で、実行犯は駒。」
精ちゃんは間を置いた。
赤也くんに歩みより、しゃがんで口を開いた。
「で、聞きたいことは分かるよね?」 「…。」
「赤也がやったのか、それとも犯人の狂言なのか…。」
精ちゃんの声色はいつもより低かった。 笑顔も冷たさを感じる…。
私もブン太も言葉は発せなかった。
「ッ…。 信じて、くれますか?」
「赤也が言うなら、俺は信じるよ。 仲間だから…。 でなきゃ直球に赤也に聞いたりしないさ。」 「幸村部長…。」
先ほどの冷たさとは違い 真っ直ぐに赤也を見つめて優しく声をかける精ちゃん。 部長の顔をしてる。
「俺たち立海大の絆、ちぎれたりしねだろぃ!」 「丸井せんぱ…、」
ブン太はニカッて笑って赤也くんの肩に左手を乗せて右手の親指を立てた。
赤也くんは涙目になってる。 「赤也くん、正直に話して。 私はブン太や精ちゃんにみたいに長い付き合いじゃないけど、 赤也くんを信じる。」 「名前先輩…」
本当は信じるかどうか迷ってたけど、ブン太や精ちゃんが心から信じてる。
赤也くんは悪い子じゃないと思うし。
「電話の人が言ったこと、本当です。」 「赤也…」 「嘘だろぃ…?じゃあ、」
「でも!俺がしたのは瓶だけで…だけっつーのも可笑しいけど…ッ。」
精ちゃんは静かに名前を口にして ブン太は予想外だったのか信じられない、と言う顔をしている。
赤也くんの否定の言葉で遮られた先は手紙も赤也くんではないか? と言う事だったんだろう。 けど赤也くんは否定した。
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