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「精ちゃん!おはよう。」 「よっ!」
「名前に丸井、おはよう。」
予定通りに11時に着いて、精ちゃんの病室にお邪魔する。
「名前、幸村くんに携帯見せてあげろぃ。」
ブン太に言われて、携帯を着信履歴の画面にしてから精ちゃんに手渡す。
精ちゃんは、しばらく画面を見てから私の方へ顔を向けた。
「゙090-1204-****゙…。 この下四桁が名前の誕生日なんだね。」
「うん…。」 「で、問題ば1204゙。 この四桁の数字か…。」
また精ちゃんは俯いて顎に手を当てる。
「俺、この数字に見覚えがあるんだよぃ。」 「…名前の誕生日って事からして、単純に考えるとこの電話の相手が意図的にこの数字にしたとすれば、 この1204も誰かの誕生日だね。」
知らない、そんなの。
「……仁王…?」
「え?」 「丸井?」
少し間をおいて、ボソリとブン太の口から出たのは確かに゙仁王゙と言う単語だった。
―――仁王が犯人なの?
「仁王の誕生日って確か12月だったろ?!」
精ちゃんの肩に両手を置き、真剣な顔つきでブン太は叫んでいた。
「…丸井、早計な判断は良くないよ。」 「幸村くん…ッ!」
興奮しているブン太に精ちゃんは落ち着いて宥めた。
「落ち着くんだ。 確かに、仁王の誕生日は12月4日で間違いない。」 「じゃあ!!」
「だが、よく考えてみるんだ丸井。
仁王の異名はコートだけじゃない。 そんな仁王がこんな短絡的で分かりやすい事をするかな?」 「っ!」
ブン太の言葉を遮り、ゆっくり説明している精ちゃんの言葉はイマイチ私には解らなかったけど ブン太は分かったのかハッとして黙り込んだ。
「何にしても、知らない人間が犯人の可能性もあるし仁王が犯人だと決め付けてかかるな。 まだ、何もわからないんだから。
電話の相手が言ってた事…
赤也がその…、瓶の犯人かどうかもね。」
しばしの沈黙を破ったのは私。 「赤也くんってまだこの病院にいるんだよね…?」
電話の相手が言っていた、赤也くんのこと。 嘘か本当なんか分からない。 でも本人に黙ってあれこれ詮索するのは疑ってるみたいで、嫌。
でも赤也くんは被害を被ってる。 それは明らかに私が原因だから、話さなきゃいけないことだと思うから。
「あぁ、いるよ。」 精ちゃんは微笑みを溢して答えてくれた。
ブン太は苦々しい顔をして何も言わない。
長年の付き合いだから、私が思ってることがわかってるんだと思う。
でも黙ってくれてるって事は黙認してくれる、と言うこと。
「赤也くんにも話、聞いてみたいの。」
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