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「それでご用件はなんですか?」 「あたしら、幸村が好きなんだ…」 「だからどちらか選んで頂こうかしら、と思いまして。」
「あたしはアンタとなら二股でもかまわないよ!?」
テニス部の部長さんが口を開いたのをキッカケに交互に話まくる二人。
鬱陶しいこと極まりないな。
「申し訳ないんですけど、僕は付き合いたいとかは今はないんですよ。 すみません、それでは…」
と、帰ろうとしたらドアの前には空手部長の三年生。
「私も幸村が好きだ! …四人で仲良くシよ?」 「っ!な…!! やめろ、離せよ…っ」
いきなり後にいるテニス部長に本で頭をどつかれた。 ふらついた瞬間に空手部長が僕を組み敷いた。
「せんせーっ!!荷物って資料室で良いんですか?! え?忘れ物? もー、歳ですねぇー
急いで取りに行って資料室に行かなきゃ!」
やばいなーとか思った矢先、外から聞こえた声。
それを聞いた三人は慌てて出ていった。
「危なかったかな? それとも、邪魔だった?」
入れ違いでひょこっと顔を出した声の人物、それは…
名前だった。
「いや、助かった。 君は確か以前ここにいた…」「覚えてたの?忘れてると思ってた…」 「ふふ…。結構記憶力良いから。」
目をパチクリとさせる動作が可愛くて笑みがこぼれた。
「ありがとう、さっきのは演技?」 「うん。今日もブン太を見ようとしたら幸村くんが告白されてるから、待ってたの。 そしたら雰囲気が危なかったから…」
「…ブン太って、最近レギュラーになった丸井 ブン太?」 「あ、私名前出してた? 幼なじみなの。私とブン太。」
その時は何故か自然に言葉を受け入れた。
以前疑っていた自分を恥じた。
それからは携帯のみのながら連絡を取り合っていた。
しばらくしてお互いの名前の呼び方が変わった。
俺が入院してもたまに顔を出してくれていた。
それが俺と名前の関係。
お互いが秘密を共有しあう仲のつもりだったけれど、今回の件は単なる通り魔じゃないな。 名前が関係してる、見たら分かる。
…side幸村…終
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