長編 | ナノ

12


――ゾクッ


一瞬背筋に寒気がするほどの嫌な気配がした。
周りをキョロキョロしても何かあるわけでもなかった。

「体育か、俺も出るかのぅ。
お前さんの体操着姿好きじゃし。」
「…口が達者ね。」

無表情で話すのに口から出るのは大抵の女の子が彼に期待している甘い言葉。
無表情でなければ、私も顔が赤くなっていたと思う。





そんな事より…
さっき一瞬だけ感じた嫌な気配が気になるが今は一切感じない。

多分、さっきのは気のせいだ、とそう思いたい。


















「あれ?仁王に…名前?
なんで一緒にいるんだよぃ。」

屋上から教室に向かおうと屋上の階段を降りようした瞬間、赤髪が横切った。
ドキリとしたがすぐさまいなくなったのでホッとした次には、ブン太が戻ってきたらしく話しかけてきた。


至極不思議そうな顔をして、私と仁王くんを交互に見ている。



「…仁王、まさかお前…」
「ピヨッ。」

「名前に手ェ出したんじゃねぇだろうな…?」

仁王くんを睨みつけるブン太に対して
仁王くんはお得意の不思議言葉を発する。

「心外じゃな。俺は名前とご飯食べてただけじゃし、のう?」
「うん、仁王くんが私に手を出すわけないじゃない。」

…まぁ私はご飯食べれてないけどね、と心中では毒ずく。

飄々とした態度の仁王くんとあっけらかんとした私の態度を見たブン太は何もなかったのが分かったらしい。
すぐにニコニコとした顔に戻っていた。





ブン太が心配したのは仁王くんに付きまとう噂のせい。

私も耳にしたことがある。


゙女遊びが激しいぺてん師゙
゙女を魅了する魅惑の中学生゙


数々の通り名を持つ彼は、ブン太の様子からして噂だけではないらしい。
…私のクラスの子が一人、仁王くんが原因で学校を止めた。
やり逃げ、と言うやつらしい。
女子が騒いでたけど関係なかったから気にはしてなかった。




だいたい、仮にも私は仁王くんの部活仲間の幼なじみだし。
さすがに仁王くんもこんなブス相手しないのに…

心配性なんだよね、ブン太は。















「びっくりさせんなよなー!
普段から話すらしてねぇのに二人で屋上から降りてくるもんだからさあ。悪りぃな?仁王を疑って。」
「構わんぜよ。
それほどまでにブンちゃんが名字の事が大事なんが分かったけぇ。」







仁王くんのその言葉聞いたブン太は顔を真っ赤にさせていた。
でも否定はしていなかった。

それを嬉しいと思っている私もきっと赤い顔をしてる。


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