長編 | ナノ

09


結局玄関まで来てロッカーは学年別なので赤也くんとは別々になった。

クラスもかなりある立海大の玄関はかなり広く、私がいるクラスと赤也くんのいるクラスのロッカーはかなり距離がある。
50メートルくらい?

玄関は一般生徒が登校するには少し早いこの時間は、朝練がある部活の部員しかいないのでかなり人気がない。


そんな私のクラスのロッカーの前には見覚えのある派手な銀髪。
人気がないとか関係なしに目立つ彼。

しかし話たこともなければ挨拶するような間柄でもない私達。
私は無言で靴を履き替えようとロッカーの扉を開けた。











そう、先程の赤也くんの事に頭がいっぱいですっかり忘れていたのだ。

毎朝置かれている

゙あの瓶゙の存在を。











――ガチャ



「…ッ!!!

ひゃっ!」

瓶の存在に油断していた私は思わず声をあげそうになり、寸前で抑えた。

が、鞄を思わず落としてしまった上に後退りしてこけてしまい尻餅ついたと同時に悲鳴をあげてしまった。
かなりの音と声でさすがに無視出来なかったのかロッカーを背にして校内に向かう仁王くんが振り返る。




この三年間で初めてまともに仁王くんと目があった気がする。

「…お前さん…大丈夫か?」

無表情に話すものだから仁王くんが話かけてきた事に理解するのに間があいた。

「う、うん…大、丈夫…、…。」

あまりの驚きに上手く話せなかった。
さりげなく仁王くんはこちらに歩みかなりの至近距離で左手を前に出してきた。


どうやら手を貸してくれるみたいである。




「しっかし、こんなところで転ぶなんざ、お前さんドジやのぅ…」


手を掴んで起き上がった私に対する一言。

「〜うっ…わ、悪かったわね。ドジで。」

性格も可愛くない私は売り言葉を買い言葉で返してしまった。

「…ほぅ。恐いのぉ。」

言葉と裏腹にいかにも楽しげな顔をしていた。











「ところで、これはなんじゃ?」

!!!!!
ふと、気付けば仁王くんはあの白い液体の入った瓶を左手に持っていた。

「あ、えっ…と。それは……」
何て言ったら良いか分からず口ごもる。







『…おはよ〜』
『おっはー!』

朝の登校ラッシュになったらしい。
生徒たちの声がすぐそこに聞こえ、姿もかなり見えた。




「ふむ、お前さん…
昼休みに屋上に来んしゃい。」
「えっ?!ちょ、仁王くん!」

生徒の姿を確認するとチラッと目だけコチラに向けた仁王くんは言いたいことを言って一人スタスタと去っていった。





…あの瓶を持ったままで。














唖然とする私は当然
私達二人の様子を一部始終、犯人が憎しみと嫉妬の念を瞳に宿して見ていたのを全く気付かなかった。


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