長編 | ナノ

鑑賞


クラス内の視線が外れて再びクラスが喧騒に包まれたのを確認してから雪菜に小声で話し掛けた。

「え?どういう事?」
「どうもこうも…。
トイレからの帰りに亮とすれ違いそうになって舞い上がってたら、腕掴まれて"昨日の…その、サンキューな"って囁かれたの!」

凄く幸せそうな顔をして経緯を話したかと思えば、きゃーっなんて言って自分の世界に入り込んでいる。






軽く引くくらいの行動をする雪菜でも、やはり憧れの人に話し掛けられたのは羨ましい。
















でも、なんで昨日のアレが私たちからだと分かったかは疑問。



















「ね、ねえ、雪菜。」
「なあに?」

ぎこちなく雪菜に話し掛ければ、デレデレした様子で応えてくれた。

良かった。
まだ私に反応する程度の妄想で。
















「なんで昨日のが雪菜って分かったの?」
「そういえばそうね。
話し掛けられた嬉しさで気付かなかったわ。」


なんでだろうね?と逆に聞いてくるあたり、本当に宍戸君とは先ほどの一言を言われて別れたようだった。








それはそれで仕方ない。
雪菜が私で宍戸君がジローなら、私も嬉しさでいっぱいいっぱいになって話を繋げるなんて無理だろうなと想像出来るから。


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