お題 | ナノ
大きく育った桜の木から降り注ぐ木漏れ日、風通しも良く程よい温度、人通りがない割に行き届いた芝と花壇。
そしてそこには必ず、大好きな彼がいる。
そこが学校…むしろどんな場所より一番私が好きな場所。
校舎裏にひっそりと佇む桜の木は、ここ近年実を結ぶ事がないそう。
実際私はこの二年見た事がないし、卒業する今年も見れないものだと思っている。
それでも全く問題ない。
彼、芥川慈郎と私だけが知る特等席なのだから。
「じろーじろー…寝てるの?」
ジローは放課後以外のほとんどの時間をこの特等席で過ごしている。
放課後は部活があり、ここにいると樺地くんに入らせてしまうから絶対に来ない。
私は昼休みとたまのサボりに利用している。
そして、今は肌寒さが厳しい季節の昼休み。
そうそうにお弁当を食べ終えたジローは私の膝を枕にして爆睡しているようだった。
「―――好き。」
もう二年以上の付き合いのあるジローが爆睡しているのを確認し、ぽつりと呟いてみた。
意識のあるジロー相手には言えない二文字。
それが言えて少しばかりスッキリする。
卒業してジローと関わりのない人間になる恐怖よりもフラれる恐怖の方が大きい。
そんなチキンな私に私自身が失笑。
「ふふっ、なんてジローに
…え?」
理解する間もなく目の前にはジローの瞼と黄色い柔らかな前髪。
ぐいっと引っ張られた髪が痛い気もするし、屈む体勢が辛い気もする。
けれど何よりもジローとキスしている事実に頭が追い付かない。
「やっ、…じ、じろー……ふぅんっ」
息が思うように出来ずジローの名を呼び助けを求めるが素知らぬ顔で貪りつくようにひたすらキスをしてくる。
しばらくしてからゆっくりと離れていくジローの唇。
それと共に開く瞳はえらく真剣みをおびていて、目をそらせない。
「…さっきのさあ」
「本気?」
「嘘じゃねえよな?」
確かめるように一区切り置いて喋りかけられる。
嘘なわけがない。
もちろん本気だ。
そういう意味を込めて頷く。
途端にジローはにやついて再び貪るようなキスをする。
「俺さあ…。
いや…俺も、おめぇの事……ずっと好きだった。
むしろ食べたいくらいに愛してる。」
二度目のキスを終えてから、とびっきりの笑顔と共に発せられた甘いセリフ。
自由きままで
少しばかり強引で
甘いセリフを吐く彼。そんな彼とのキスは貪りつく少し強引な――
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