お題 | ナノ






我が校には有名なカップルがいる。


生徒会会長であり男子テニス部部長の跡部 景吾
生徒会副会長であり男子テニス部マネージャーの早乙女 かれん
このカップルは知らない人などいるのか?というほどの美男美女カップルだ。




彼は私の幼なじみだった。
彼女は私の親しい友人だった。


二人は私を通じて知り合い私を通じて付き合った。
けれど、幼なじみだった事も親しい友人だった事も
もはや誰も知らないのではないかと言うくらいに私は二人と距離を置いた。











私の家は裕福ではない。
そんな私が彼と知り合ったのは単なる偶然としか言いようがない。

裕福ではないのでもちろん小学中学は公立で
氷帝へは高校からの入学だった。

彼女とは中学からの友人で一番信頼していた。
私が氷帝へ行くと言えば彼女も氷帝へ行くと言った。

入学式で彼と彼女を引き合わせ
その後彼女はマネージャーとなり
いつしか二人はお互いに惹かれ合ったと言う良くある話だ。








未だに未練たらたらのまま卒業式を迎えてしまった。

これで完全に二人とは縁が切れてしまう。
けど人気者の二人の周りには代わる代わる人が集まり話かける隙もなかった。

私が二人と縁があったことが奇跡に近い。
今まであった運がなくなっただけの話












なのに
どうして私の目から溢れるものは止まってくれないの。











「何を泣いてんだ、梅。」

時が止まったのかと思った。
彼はいつの間にか人の輪から外れ私の目の前にまでやってきていた。

周りに気付かれないようにと分かりづらい場所にいた私の目の前に。



彼らしいと言えば彼らしい。
彼は周囲を良く見ているし、何だかんだと優しい人間なのだから。


「何でもないよ」「卒業おめでとう」「かれんとお幸せにね」


そんなありふれた言葉の嘘で笑って彼を振り切った。






















好きだと言えたらどんなに楽か。
でも知ってるから、言ったところで惨めなだけだ。
言う勇気すら持ち合わせてないけど。


ただ一言が、声にならない
(君の答えを知っているから)