お題 | ナノ






幼い頃はそれはそれは仲の良いご近所さんだった。


それが、いつから変わってしまったのかは今となっては分からない。













「おいブス、掃除やっとけよな。」

そんな彼の一言でクラスメートたちは後よろしく等と口々に言いながら教室から出て行く。



カリスマ性がありリーダーシップもある彼がクラスの中心で、彼が嫌う私に話しかける…ましてや気遣う人なんていない。

だから今日も彼に言われた通りに一人虚しく掃除に取りかかった。





















掃除をやっとの思いでやり遂げて帰宅しようと下駄箱で上履きから運動靴に履き替える。

ちょうど部活活動時間も終えたのか、あちらこちらに各部の制服を着た生徒が伺える。





その中に、ガムを口に含み赤い髪を揺らしながらラケットと鞄を持った彼…丸井君を見つけた。

部活仲間でろう人たちと楽しそうに談笑しながら部室らしき建物に入って行った。




それを横目に帰路につこうと通学路を歩ていた。





















しばらくすると後ろから人の走ってくる気配があり振り返ると、丸井君だった。

丸井君だと認識してから慌てて前に視線を戻すも、丸井君に肩を叩かれた。










歩く足を止めて恐る恐る丸井君を見ると、丸井君は私の顔を覗き込むようにして囁いた。

「無視するとか…何様?」
「ご、ごめ…っ。」

既に身に付いた謝り癖から即座に謝っても、毎回丸井君は機嫌を悪くする。





「なんで謝んの?なんか悪い事したわけ?」
「ちが…けど、」
「…お前さー、なんで俺がお前に構うと思う?」
「え?」

クラスメートを中心にから無視されても、何故か丸井君は暴言を吐くだけに絡んで来た。
でも、それは理由とか無しに私が単に気に入らないんだと思っている。




















「ばーか。」












微かに笑った気がして、呆気に取られた隙に丸井君の顔が更にドアップになったかと思えば唇に温かみを感じた。



それをいわゆるキスだと認識する前に、顔を赤くした丸井君に驚いた。