お題 | ナノ






私には長年付き合っている彼氏がいる。

彼氏、のはずだ。
ノーマルな彼氏のはずなのだ。











…多分。















「おい、長太郎知らねーか?」
「長太郎の奴、激ダサだな。」
「今日長太郎がよー」
「あー、その日は長太郎と…」

なんて毎日毎回毎時と部活の後輩でありパートナーの鳳君の話題を出されていようと、亮の彼女は私のはずなのだ。

さすがに言い切る自信は、ないけど。




例え付き合った記念日の今日まで鳳君と買い物に行ったとしても。
お互いに思いやる事が大切なわけだし。











でもやっぱり不満に思ったりするわけで、未だに鳳君と買い物しているだろう亮に少しでも会えないのか、と言ったメールを作成し送信する。

朝に送ったそれは夕暮れ時になっても返って来なかった。











彼は携帯を頻繁に触るタイプではないし、鳳君と一緒なら尚更だけど無理なら無理と言って欲しいのは私の我が儘なのかな…。






















―――――



待ち焦がれた亮からの連絡があったのは夕飯も終え、入浴しようとしていた20時前。

亮からの着信にワンコールで出た私に、亮は電話越しに早いな、って笑った。










しばらく、間が空いて何か話さなきゃと思いつつもどう切り出そうか悩んだ。

「…悪いな、今日。」

記念日だったのにな、って申し訳なそうに謝る亮に、言いたかった数々はあっさりと消え去った。

変わりに、会いたいって言葉をすんなりと口から発した。

夜も遅いから私の家の前で少しだけなら、と承諾してくれた。











「今日は本当に悪かったな。
…寒くないか?大丈夫か?」

再度謝罪する亮に、本当に良いよ寒くないよって言った。

またお互いに口を閉ざして30分は経ったであろう頃合いに亮が口を開く。





















「時間、はあまりに作れねえけど…ちゃんと梅を大切に思う気持ちはあるから。

今日のメール嬉しかった。」


そんな事をそっぽ向きながら言って、ぎこちなく顔が近付きリップ音を鳴らした亮は狡いと思う。

リップ音だけでなぐ鈍い音をならす亮を愛しいと思う
















私の彼は
不器用で口下手で、青春真っ盛りで、かなり後輩と仲の良い、そんな人。