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birthday/大輝

「え」
「だからー、31はさつきがうるせえんだよ。
だから、その日は無理。」
「ちょ、」
「つーか、その前後も無理。」
「待って…」
「まあ仕方ねえよな、そういう事だから。じゃーな。」
「っ」





中学から付き合っている大好きな彼氏である大輝の誕生日である8月31日に少しでも良いから二人で会いたいと言った結果が冒頭にある通りである。


付き合っていた当初からさつきちゃんを始め、部員や部活を優先させていたのは理解しているつもりだ。


バスケ界でキセキの世代と言われ、その中でも一際特別な存在だと、理解している。
だから、その部員の人たちやマネージャーであり幼なじみのさつきちゃんの存在が特別なのは理解している。












だからと言ってこう毎年毎年イベントを過ごせないのは理解出来ない。


お互いの誕生日はもちろんの事
クリスマスと年始年末に中学時代の文化祭は部活仲間と行ってるし
バレンタインデーにホワイトデーはファンの子の対処があるし
たまの連休はさつきちゃんと家族ぐるみで何かしらしている。



とどのつまり…彼女である私がまともに過ごせる日は、ない。











少し、期待していた。

いくらさつきちゃんが居ようとも、もう赤司君や黒子君たちがいた中学時代とは違うんだから。
だから、少しは私と過ごせるようになるんじゃないかと。


だから中学時代に言えなかった、誕生日に少しでも過ごしたい我が儘を口にしてみた。
中学時代のように笑って「相変わらず仲良いよね、分かった。」なんて言わなかった。

でも、いや、やはり無理だったようだ。


















「あれ?桜井君?」
「あ。
お、お久しぶりです、スミマセンっ。」

万が一、と予定を空けていた31日には結局一人で街をぶらついてみた。



すると、良く見知った姿を発見したが、最初は見間違いかと思った。

大輝が言った"さつきがうるせえんだよ"と言う言葉から部活関係だと思い込んでいたから、大輝と同じくバスケ部のレギュラーである桜井君のはずがないと思い込んでいたからだ。




「今日って…ぶ、部活じゃないの?」
「えっ、あの。スミマセン。
オフでスミマセンっ。」

平常心を心がけて桜井君に尋ねるも、いつものよう勢い良く謝られて部活ではないと言われた。

今までもあった。




大輝がさつきちゃんと二人きりで練習したり出掛けたりする事は今までに数え切れないくらいにある。

でも、
「っ、…じゃあ……。
大輝とさつきちゃんだけで出掛けてるんだ…。」
そう呟くように返すのが精一杯だった。
















桜井君と別れて、一人とぼとぼと歩いて帰宅した後は逃げるようにして眠りについた。




目が覚めた頃には日が暮れきっていて、かなり寝ていた事が安易に分かった。
時計を見ようと暗い部屋の中で携帯を探し、開く。



そこには
不在着信:青峰大輝
と言う表示がずらりとあり、慌てて大輝に電話をしたが出なかった。

「も、やだ…。」

何だか全てが嫌になり溢れる涙をそのまま流した。

















「…何が嫌なんだよ。」
「っ!?」

良く知った大好きな声。
声がした方を良く目を凝らして見ると大輝が腕を組んでいた。
表情までは見えないが声からして不機嫌そうである。

「電話出ねえから来てみりゃ寝てるし、起きたかと思えば泣き出すし。」

そう言ってため息を疲れた時に今まで溜めていたものが爆発した。


「誰の!せいだと…。
私、もう我慢出来ない。
部活も仲間もさつきちゃんもっ、大切なの知ってる!理解出来る、でも。

も、無理…。
意味ない肩書き、なんて…いら、」



まだ言いたい事はたくさんあるのに、全て投げ捨ててしまいたいのに。
なのに大輝は私を強く抱きして、いっぱいのキスをして言わせてくれなかった。





「…んな事言うなよ。
お前がどうでも良いから、とか別れたいとか思ってねえよ。

今まで悪かった…。
今日さつきにも強く言われた。

んで、これ…。」
「…な、にこれ」
「あー…だから、あれだ。あれ。

今までの気持ちとこれからの気持ち?」
「っ、今日はあげる側なのに…」
「良いんだよ。
俺はお前が幸せ感じてくれんのが一番のプレゼントになンだよ。」













あなたの生まれた日に
あなたから貰ったもの


それは将来の約束された指輪。









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