夏休み終盤に差し掛かる8月26日。
そんな日に、彼は生まれたらしい。
神尾君とは、1年の頃に幼なじみでありクラスメートである深司を通して知り合った。
神尾君と深司は、同じテニス部でダブルパートナーでもある。
2年になると同じクラスに深司の他に石田君もいる為か、神尾君は良く私達のクラスである2年2組に良く来ていて、瞬く間に親しくなった。
親しくなって行くにつれ、神尾君に徐々に惹かれいき、今やベタ惚れである。
もちろんすぐに深司にはバレてしまい今や協力して頂いている。
誕生日を知ったのも深司のおかげだし、夏休みにも関わらず誕生日に神尾君と会えるのも深司のおかげ。
もっと言えばプレゼント選びも深司と考えたくらいで深司様々である。
神尾君の誕生日当日。
「…ちょっと、コンビニ行って来る。」と言って片道徒歩5分のコンビニに出掛けて行った深司により、部屋には神尾君と私の二人だけとなった。
「あ、の…神尾君……」
「どうした?」
神尾君が緊張しきった私に振り返ったのを見計らい、無言でプレゼントを渡した。
神尾君は最初びっくりしたような顔をしていたけど、自分へのプレゼントだと分かると照れた様子で受け取ってくれた。
受け取ってくれた事に安心して誕生日おめでとうと祝福の言葉も送った。
神尾君はさっそくプレゼントを空けて行き、中に入ってあるものを認識すると初めて見るくらい嬉しそうに笑ってくれた。
「これ…!
ずっと欲しかったCD、マジでサンキューな!」
「ううん、気、に…しないで?」
嬉しそうにする神尾君を見てプレゼントは正解だと一安心。
でも、本番はここから。
「って、CDがもう1枚…?」
「そ、そっち…から、き、聞いて欲しい…。」
私がプレゼントしたものは神尾君が好きなロックバンドの限定アルバム。
それから――――
「――っ。」
CDを聞き終わったであろう神尾君は顔を真っ赤にして慌ててイヤホンを外していた。
不安な気持ちがその動作により更に不安になる。
「…どう、でしょうか?」
「いや、つーか…俺で良い、のか?」
「神尾君が、良い。」
恐る恐る尋ねるとまさかの愚問。
神尾君は更に顔を赤らめて少し目を泳がせたかと思うと両手で私の肩を掴み、目を合わせて口を開いた。
「えっと、じゃあ…こ、これから……よろしく…。」
【私、は…神尾アキラ君に、恋…しています!
神尾君を好きな気持ち、誰にも負けてない。
好きで…好きで、好きで。
他に言いようがないくらい…好きで溢れています。
どうか私と、お付き合いして下さい。】
CDに込めた私の思いは無事に届いたようで…そんな愛する人の誕生日。