私の通う高校は付属高校であり付属中学もある。
かくいう私も卒業した母校でもある。
私の通う高校は、私が卒業した翌年からその付属である氷帝学園中等部の、とある集団の話題で年中もちきりだ。
主に王様気取りの子がテニス部を乗っ取ってホスト部にしたと噂される人物が中心とされている。
その子の名前は確か…―――
「景吾だ。
跡部景吾、知らないとは言わせないぜ。」
そうだ。跡部景吾だ。
寄付の金額は歴代一で、一年のうちからテニス部部長に就任したり生徒会会長に就任したり…とにかくこの三年間、話題に事欠かない人物で、名前を聞かない日は無かった。
その跡部景吾様が
高等部の卒業式に一体全体何の用だと言うのだろうか疑問そのものだ。
もっと言うならば、私のような凡人に何故声をかけたのか、もはや予想もつかない。
「あの、跡部様が一体何の用でしょうか。」
だから率直に聞いてみた。
なのに跡部様は鼻で笑って愚問だな、と呟いた。
…ちょっとムカついた。
「俺は麗子が好きだ。
だから卒業して他県に行く前に捕まえに来た。」
「え…?つか、ま…え?」
ちょっと何を言っているか理解出来なくて、呆然と聞き返した。
跡部様はため息をわざとらしくつくと、ナチュラルに私の腰に手を当てて身を寄せた。
「付き合えって事だ。
そのくらい悟れねえか、あーん?」
「っ、ちかい!」
かなりの至近距離で言われて思わず体温が上昇する。
とりあえず体を話そうと、彼の体に両手をあてて押そうとした刹那に口に口を押しやられた。
いわゆるキス…しかもディープと言うものになるのか。
跡部様はキスも大変お上手で、うっかり意識を持っていかれそうになり
慌て右手で左頬にビンタを食らわした。
さすがにビンタされた跡部様は私の体を解放し、一歩二歩と後ずさりながら左頬をさすった。
「…やってくれんじゃねーの。」
少し立ち止まり、何やら思い切り笑ったかと思えば、高圧的微笑を浮かべた。
「好きなだけ抵抗すりゃ良い。
今日は麗子、お前に付き合う事を伝えに来ただけだ。
お前の気持ちなんざ後からついて来るだろうよ。」
そう自信満々に言い放った跡部様は優雅に離れて行った。
私はこの後彼に恋する。