この頃、仁王君と良く視線が合う。
合うと言うか、絡むと言った方が良い気もする。
理由は分かってる。
私が好きな人である丸井君を見て、仁王君は丸井君と良く行動を共にする。
つまり、本人である丸井君は鈍いから視線に気付かないけど相方である仁王君は鋭いから視線に気付く。
分かっているのに丸井君に目が惹かれるもんだからつい見てしまう。
見てしまうと仁王君からの視線が気になり、仁王君を見て視線から絡んで、のループ。
仁王君も仁王君で、こんなにも視線が絡んでいるのに特に話しかけては来ないし、私が見ている事を丸井君に言った素振りもない。
ただ、当たり前なんだけどいつも睨まれている。
ある日の放課後。
とうとう仁王君から誰にも言わずに放課後教室に残るように言われた。
仁王君は一旦部室に行って、抜け出して来るらしい。
「すまんの。」
「にお、う君…。」
10分か15分かそんな短い時間で仁王君は戻って来た。
嫌な緊張感で溢れて心臓は破裂しそうなくらいにバグバグ鳴っているのが分かる。
「お前さん、いつから好きなんじゃ?」
いきなりの核心に思わず息をのむ。
答えない私をよそに仁王君は息をする暇もないんじゃないかと思うから矢継ぎ早に口を開いた。
「かなり前からみたいじゃが…同じクラスになるまで気付かなんだ。」
「まあいつからでも良か。」
「少しばかり意外じゃったがな。」
「何にせよ、今日からお前さんの不毛な思いは終いじゃし。」
一人話を進める仁王君についていけず困惑して話の内容なんて全く理解出来なかった。
でも、それも次の一言で良く分かった。
仁王君の言っている意味も、仁王君からの視線も。
「お前さんは、いや…麗子は俺と付き合えるんよ。
毎日毎日視線を合わせるだけのじれったい関係じゃなしに、愛し合える。」
「え?」
「ま、気にしなさんな。
麗子は今までと変わらずに俺を思っちょればえぇだけじゃ。」
そう言って見た事のない、人懐っこい笑顔を見せられた。
私は彼の視線だけでなく彼の瞳に宿る狂気さえも気付いてしまった。