「みーつけた!」
「っ。」
とある事情で中学時代に引っ越したこの街にも慣れて来て、高校上がり新しい制服に身を包んだ学校からの帰り道。
突如として引っ越さなければならなくなった原因の人物が破顔して目の前に現れた。
その笑顔はどこかぞくりとするような歪な笑顔で、昔とはまた違った表情だった。
「心配したんスよー?
いきなり居なくなるから。」
そう言って彼は声にならない声を発して恐怖する私の事などお構いなしで私に近付く。
思わず後ずされば、素早く左手を右手に掴まれて、そこから身動きが取れなくなってしまった。
「もう一安心スね。
居場所、…分かったし。
でも、やっぱり少し心配なんで―――」
「え?」
中学時代、名も知らない彼がいつの間にか恋人の位置にいた。
私だけが知らなくて、彼はその気で、学校にも周知で。
ある日を境に始まったイジメに困惑して、後から知った。彼が原因だと。
更に後から知った。
彼がモデルで、かの有名なバスケット選手だと。
知ってからは早かった。
親を説得して手続きが出来次第に引っ越しして転校もした。
その代償がまさかこんなにも大きいだなんて思わなかった。
車椅子に座ってウエディングドレスに身を包み、黄瀬と言う名を名乗らなければならないなんて、露にも、思わなかった。