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君は幼なじみ

「お祭りに行きたい」

















暇で暇で仕方ない、10月入ってすぐの日曜日。

幼なじみである清志の家に無理やり上がり込み、それだけを言い放ってみた。


もちろん清志にはポカーンとした後に"は?"と言われた。
















「だーかーらー。
今日神社でやる祭りに、いーきーたーいーなっ。」

それでも挫けずに
呆れた清志の背中に回り込み、後ろから首に腕を回し抱きついてからもう一度伝える。


が、当たり前だけど即座に離されてため息までつかれた。酷い。
















「彼氏に言えや。彼氏に。」

とか言いつつ立ち上がっているから連れって行ってくれそう。

だいたい彼氏とか言われても他校だしテニス命だし、祭りとか好きな人じゃないし。












「あのテニス馬鹿には言っても無駄だし、行こうよ。
てか、連れってよー!」
なんて言えばまたまたため息ついて財布や携帯をポケットに入れドアに向かった清志。

さすが幼なじみ。







「はあ……、俺だって練習あんのに。
仕方ねえなあ。」
「わーい」












神社に着いてから、射的やボール救いをやって焼きそばやたこ焼きを食べて…とにかく手当たり次第に屋台を回った。


さすがに二時間も歩きっぱなしで疲れてきたから、屋台から離れた人気のない林の石に二人で座った。











「相変わらず人多いね。」
「そーか?昔に比べたら減っただろ。」

「そうかな?」
「そうだろ。」

















かなりの沈黙が続いて、突如明るくなったかと思えば花火が上がっていた。

「…ってかさ、やっぱり変わるもんなのかな」











ぼけーっと眺めながら呟くように清志に問いかけた。
清志は花火に視線を向けたままだけど答えてくれた。


「変わらないもんなんてねーよ」
「っ。
私達は変わらない、でしょ」











また沈黙。

不安押しつぶされそうになって、花火も終わりかけて、なんだか泣きそうになった。
「…なんかあったのか」
「…、何でも…ない、よ。」



最後の花火が散ってから視線を合わせたかと思えば外す事無く優しく問い掛けられて、思わず言葉がどもった。















「練習だろ、練習。
俺だってそうじゃねえか。
強豪ってのは練習尽くしなもんだよ。

不安になんかなってたらひくからな?」














参ったな。
清志には全てお見通しなんだから。





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