FFIが終わり、俺たちは日本に帰ってきた。もちろん、優勝トロフィーを携えて。みんなどこか浮足立っているようだったが(飛行機酔いの綱海を除く)、もちろん俺も例外ではない。けれど俺は優勝したことも嬉しかったが、いまは別の喜びの方が大きかった。なぜなら、
「風丸くん!」
ウェッジソールのサンダルでぱたぱたと駆け寄ってくる季節さんに、ジャパンのみんなはどこか不思議そうだ。唯一季節さんを知っている円堂はあいにくたった今トイレに走って行った。久遠監督は響監督のために日本の病院に連絡をとっているらしく、ここにはいない。
「優勝おめでとう!」
「ありがとうございます!」
「あともう一つ言うことがあるでしょ?」
「えっと、その…た、ただいま、です…」
「よくできました」
にっこりとほほ笑む季節さんにつられて、自分の頬が緩むのが分かった。しかし、メンバーの視線は季節さんにくぎ付けであり、今までの会話は全部みんなの耳に入っている。少し恥ずかしい気もしたが、今はそんなことより季節さんと話せたことの方が嬉しかった。
「風丸、この方は?」
鬼道を皮切りに、いろんなメンバーからいろいろな言葉が飛び交う。「親戚?」「美人だなぁ」「陸上部の先輩とか?」「いや以外にサッカー部だったり」「彼氏いんのかー?!」おい最後のやつ風神の舞決定な。
「わたしは季節っていいます。雷門中のOGで、円堂くんの家の隣に住んでるの」
「なんだ。てっきり風丸の姉ちゃんかと思ったぜ」
「うーん、姉には変わりないんだけどねぇ」
綱海の言葉に少し困ったように笑う季節さん。その表情を見て、ヒロトがおもむろに口を開いた。
「風丸くんの彼女さんだったりしてね」
「えっ!彼女っスか!?」
顔を真っ赤にさせて反応を示したのは壁山だ。さらに他のメンバーもそわそわし始めた。季節はにこにこしているが、実際のところ俺自身心中穏やかではない。
「否定はしないでおこうかな。ね、一郎太?」
微笑む季節さんの言葉で俺の顔は一瞬にして赤くなった。俺も冷やかされるのを覚悟で小さく頷く。そして季節さんは満足げに笑った。
120315
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