わたしの彼氏さんはとても甘えん坊である。二人きりになるとべったりとくっついてくるし、誰もいないところでは手を繋いでとせがむ。雷門と戦った時の雄姿はどこへやら、今はわたしの腕に絡まって一緒にテレビを見ている最中だ。



「ねえ、テレビ消さない?面白くないよ」
「うーん。確かに」



お笑い芸人がベタなシチュエーションのドッキリにひっかかる番組を延々と見ているよりは、と思い、わたしはテレビの消した。しかし、これといってすることはないのだ。わたしは照美になにかしたいことある?と話を振ろうと彼の方を向いた。すると突然腹部にタックルされ、押し倒される形になった。



「照美?」
「ねえ、僕、おかしくなりそうだよ」
「なんで?」
「季節さんのことが好きすぎて」




…嬉しいことを言ってくれるじゃないか。照美はわたしに抱きついたままで言った。

「毎日こうやって抱き合っていたい。声だって毎日聞きたいし、キスだって、セックスだってしたい。毎日毎日、季節さんと会いたいんだ」
「それは、」
「無理だってわかってる。季節さんには学校もバイトもあるし、僕にも授業やサッカーがある。わかってるんだ。でも…」



顔は見えないから分からないけど、なんだか泣きそうな声だった。照美はこんなにもわたしのことを好きでいてくれているし、気を使ってくれている。けれど、泣いてしまいそうになるくらい不安にもさせていたのだ。嬉しい気持ちと申し訳ない気持ちが雑ざって、不思議な感覚だった。



「ねえ、照美」
「ん、」
「私には講義とかバイトとか付き合いとか、大学生なりにいろいろあるよ。もちろん照美にも部活や学校や友達との約束とかあると思うよ」
「…うん」
「でもさ、こうやってくっついてる時間がないわけじゃないでしょ?」
「でも、僕は、季節さんに迷惑を…」
「言うだけはタダじゃない。デートが出来なくても会えなくても、わたしはいつでも照美のこと大好きだし、照美のこと考えてるんだよ」
「僕のこと…?」
「そう。今頃サッカー頑張ってるんだろうなあとか、けがとかしてないかな、とかさ」




そういうと、照美は顔をあげて頬を赤く染め、嬉しそうにほほ笑んだ。



「それにね、メールで連絡してくれれば電話くらいはできるよ」
「本当に!?」
「うん。毎日忙しいわけじゃないからね。ただし、ちゃんと都合を聞くメール送ってからだよ?」
「わかってる!」



照美は眼をきらきらさせてわたしを見つめた。わたしは可愛い彼氏の頭を撫で、ぎゅうっと照美を抱きしめる。



「好きだよ、照美」
「僕も、季節さんがいないと生きていけないくらい好き」



わたしの彼氏さんは今日も甘えん坊です。



110108






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