「あ」
「あれ、幸次郎じゃん」
「知り合いか?源田」



佐久間と辺見と成神の4人で学校から帰っている途中、に会った。彼女の手には食材が入っていると思われるバッグがあったので、近くのスーパーにでも買い物に行った帰りなのだろう。時刻は夜の七時過ぎ。確かに出くわしてもおかしくはない時間帯だ。




「幸次郎のお友達?」
「ああ、サッカー部のメンバーだ」
「へー、あの帝国の部員かぁ」




こんばんは、と彼女が声をかければ他の3人は少しびっくりした表情で挨拶をしていた。




「じゃあまたね。みんな暗いから気をつけて帰るんだよ」
「はいっ」
「あ、幸次郎。もし今度うち来る時はゴミ袋買ってきてくれない?今日買い忘れちゃって。わたししばらく缶詰だからさ」
「わかった。季節も気をつけて」
「ありがと。じゃあね」



軽く手を振って彼女は走り去って行ってしまった。たまたまだとしても、彼女に会えたことで少しだけ気分が軽くなったのは気のせいではないだろう。



「なあ源田、あの人誰だ?」
「そうっスよ。やけに親しそうだったみたいですケド」
「近所の姉さん的な人か?」


3人そろって質問してくるものだから、少しだけ言葉に詰まってしまった。特に疚しいことはないのだが、何から答えようか困る。まあ、一言だけで説明はつくのだが。



「俺の彼女だ」



その瞬間、みんなの表情が固まった。佐久間は目を見開いて俺を見て叫ぶ。




「お前彼女いたのかよ!裏切り者!」
「裏切り者って…。それに聞かなかったじゃないか」
「でもこの間佐久間センパイが『あーあ、彼女欲しいなー』って言ってたら『そうだな』って言ってたじゃないっスか!」
「いや、あれは早く佐久間に彼女ができればいいなって…」
「それにしたってあの人…、お前いくつ年離れてるんだよ…」
「彼女が大学生だから…5つか?」
「源田死ね」
「源田センパイのせいで佐久間センパイが拗ねちゃったじゃないっスか」
「まあ、詳しい話はそこの先のラーメン屋にでも寄って聞こうぜ?」
「デコにしてはいい考えだな。よし、源田の奢りでラーメン食いに行こうぜ」




涙目の佐久間を成神がサポートしながら辺見と並んで後ろから歩いて行く。辺見が「佐久間から根掘り葉掘り聞かれるぜ、ご愁傷さまだな」とニヤついて言っていたけれど、俺は彼女のどんなところをノロけようかと考えて、少しだけ笑って言った。



「何から言おうか考えなきゃな…」



101205




こんな嫁げふん彼氏欲しいな



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