イプシロンと互角に戦った俺たちは、瞳子監督の配慮で通り道にあった素泊まりのできる旅館で一泊することになった。一部屋二人ずつの計算だが、古株さんがイナズマキャラバンの修理のためにどこかへいってしまったので旅館に泊まらないことになってしまい、俺は一人部屋を宛ててもらえたのだ。もっとも、じゃんけんで勝利したのが良かったのだが。


温泉に入って疲れた身体を癒し、髪の毛を適当に拭きながら備え付けてあった冷蔵庫からミネラルウォーターのベットボトルを取り出して、口の中に流し込む。火照った体の中心を流れていく冷たさが、堪らなく気持ちいい。そんなことを考えながらペットボトルの蓋を閉めると、廊下から走るような音が聞こえてきた。なんだろうと思う前に入り口のドアが開く。そこにいたのは四季だった。




「かくまって風丸!」
「いいけど、一体どうしたんだ?そんなに慌てて」
「土門が…」
「四季ー!こんなところにいたのか!」
「ぎゃああああ!」




なぜかはわからないが土門から逃げている四季と追いかけている土門が俺の部屋に雪崩れ込む。四季は俺を盾にして土門を威嚇している。



「ほら、もう逃げ場はないぜ?大人しくしろ」
「嫌なものは嫌!」
「あの…二人とも…状況把握が出来てないんだが…」




俺が苦笑いしながらそう言うと、土門はへらりと笑いながら「それがなー」と話始め、ようとした。が、それを許さなかったのは四季だ。




「土門がわたしに嫌なことしようとするから逃げてる!それだけ!」
「嫌なことって?」
「うっ、」




彼女は言葉につまったようで、それからなにも言わず俺の肩を掴んで盾にしたまま縮こまってしまった。土門がニコニコと笑う。




「いやぁ、一ノ瀬がリカにダーリンって呼ばれてただろ?だから俺も四季にダーリンって呼んでみてくれって言っただけなんだよ」
「は…」




…………くだらない。結局然り気無くのろけられたようなものじゃないか。なんだこのリア充ども…おっと本音が。イラッときた俺は肩にある四季の手を優しく取って、彼女の方に向き直った。怯えていたに、優しくほほ笑みかけてやる。



「風丸…?」
「…」



ノロケに俺を巻き込むのはやめろ。



「えっ」「ダーリンくらい言ってやればいいだろ。ということで土門、パスだ」
「OK風丸、ありがとな!」
「ちょ、風丸のバカ!裏切り者!人でなし!」
「土門、思う存分ダーリンと呼んでくれるそうだ」
「四季は照れ屋だからな!」
「fuck you!!」
「そうかそうかファックして欲しいのか。お望み通りに」
「ぎゃああああああああ!」




土門は四季を担いで俺の部屋から出て行った。彼女には悪いが、自業自得だと思う。彼女のいないやつに見せつけるのが悪いんだ。リア充死ね。




100702



あれ?これ土門夢?