※ねつ造高校生設定






一哉がアルバイトをしている間、わたしはひたすら家事をこなし、暇をつぶす。携帯をいじったりテレビを見たりしても片隅には彼のことを考えているし、もう病気だなぁって思うこともある。わたしは、寂しいのだ。付き合う前はこんな思いなんてしなかったのに。正直つらい。恋心とは、こんなに心がしくしく痛むものだっただろうか。


そんなことを考えながら食器を洗っていると、リリリと携帯の着信音が鳴り始めた。時刻は深夜0時半。彼からだ。



「もしもし!」
「もしもし?バイト終わったよ」
「お疲れ様。もう家?」
「家…かな?」
「なにそれ」



笑いながら窓を開け、生ぬるい風を部屋の中に入れる。
サッシに腰かけて空を見上げると、星が綺麗に煌めいていた。




「星がきれいだよー。一哉も見える?」
「ん、見えてるよ。星と一緒にすっごくタイプの女の子も」
「ばっかじゃないの」
「ふふ、ほら、下見て」




そう言われてから窓の下を見ると、そこには一哉がにこにこしながら立っている。
こころなしか嬉しそうにも見えるが、よくわからない。
わたしは携帯を握りしめて急いでスリッパをつっかけ、外に出た。
ヒールがカンカンと階段を叩く音がうるさいが、無視して走った。




「なにやってんの!」
「驚くところみたくって」
「意味わかんない…」




一哉は相変わらずにこにこしながらわたしの手を握った。彼の手は熱くて汗ばんでいた。きっと急いできたのだろう。少しだけ彼の香りがして、心臓がきゅうっと締め付けられるような感覚がした。




「ほんとはね、なんだか無性に会いたくなって、来ちゃったんだ」
「そっかぁ」
「だから今、すごくしあわせ」




抱きしめていい?と尋ねられて、返事をする間もなく抱きしめられる。
文句を言おうか迷ったが、わたしだって会いたかったのは同じだったんだ。
しばらく暖かさに身をゆだねても罰は当たらないだろう、と
わたしも彼の背中に腕を回すのだった。



(少し会えないだけで寂しいって、くだらなくて真剣な感情)


120806