真っ暗な闇のなかで、わたしは一人でうずくまっていた。ぎゅっと膝を抱えて、ただただ寂しさを堪えているわたしの姿を、わたしは眺めていた。感情や感度はある。まるで幽体離脱のように、わたしは自分を見下ろしていた。怖くて寒くて切なくて悲しくて、涙があふれて止まらなかった。頬を拭おうにも体が言うことを聞いてくれない。声を出そうにも口が開かない。ただ見ていることしかできなかった。

そこへ、見覚えのある骨ばった手が、暗闇から現れた。見覚えのあるそれはわたしの頭へ伸び、そっと髪を撫でた。少しだけ暖かく感じるそれがわたしに触れる度に、わたしの体から不安や恐怖が消えていった。だんだんと手から先が現れていく。白いスーツの袖、長い脚、人工的な色をした髪、華奢な体、そして、本心を隠すように掛けられたサングラス。彼は、彼は、



「泣くな。ましてやわたしのためなんかにな」
「お前の感情を察せないほど鈍いわたしではない」
「だが自分の気持ちには、今の今まで気がつくことはできなかった」
「帝国学園のころからわたしの傍にいてくれたお前に、何一つしてやれなかった」
「本当に、すまなかった」
「お前がわたしの傍にいるのは当たり前のことだと思っていたのだ」
「何度お前に寂しい思いをさせたのか、何度お前を悲しませたのかわからない」
「もっと抱きしめてやればよかった、そう思う」
「だが、もうそんな思いはさせたくない」
「だから…四季、」







「総帥…ッ!」



目が覚めるとまだ夜で、そこはベッドの上だった。総帥が国際警察に逮捕され、わたしはイナズマジャパンにマネージャーとして引き取られた。彼は去る前にわたしに言ったのだ。「また待っていてくれるのか」と。わたしは答えた。「もちろんです」。きっと総帥は帰ってきてくれる。そしたらわたしは総帥に言おうと思う。あなたには、毎日を大切にして、いつも笑顔でいて、幸せだと感じてほしいから、わたしはあなたにどんなときも愛を送ろう。愛するあなたの傍で、二人で、いつもいつまででも、ずっと。



そんな気持ちになった夢だった。


だからわたしは、事故のことなんて知りたくなかった。



101001



BGM:夢を見た/やなわらばー

アンケート一位。分かりにくいけど死ネタです