旧式Mono | ナノ

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事件は、買い物帰りに起こった。


シュンさんが私の目の前でバーズ(若しくはジジかヂヂ)に殺されて以来、私から風紀委員は一線置くようになった。
私と関わるとろくなことが無いということに気づいたらしい。最早、私にかまうのはユージさんと草壁さんくらいだ。
今日の買い物中の見張り係はその二人のどちらかではないため、スーパーを出た時点でもう姿は無かった。だからこそ私はちょっと公園によってみようかな、と岐路である道をそれ、迂回するように足を進めた。


――本当に、そんなことしなきゃ良かったと思った。


私の目の前にいるのは3人の男。
一人目は、タンクトップに下は作業着。黄色いヘルメットにツルハシを持った屈強というのに相応しい金髪の男。
もう一人は長い前髪を右側に寄せた、スーツの似合うどこか哀愁がかった青い瞳の少年。
そしてもう一人は、赤ん坊…は、立たないから幼児というのだろうか。スーツをまとった姿は、普通なら服を着た犬のような可愛らしいさがあるはずなのに、そこからは妙な空気しか感じない。

そんな、はたから見ても『おかしい3人組』は、悲しいことに私に胃痛を感じさせるほど見覚えがあった。最も会いたくなかった、この物語の中枢と呼んでいい存在。


…これが、リボーン。

口には出さずに、私は心の中だけで呟く。私と視線を合わせた彼は、口の端を僅かに持ち上げた。どうやら、笑っているらしい。
あざけるような笑いに私は僅かに焦りを感じたけど、一歩前に出た少年――バジルに目を移して、誤魔化した。
リボーンは読心術が使えるという話だし、あまり焦るのはよくない。相手の、リボーンのペースにはまって、余計なことを彼らにさとられてしまったら……私が守りたいものが、崩れてしまう。


「…何か、用でしょうか…」

慎重に言葉を紡ぐと、先頭にいるバジルは僅かに微笑むように表情を緩めると、はい、ときっぱりと私を絶望という穴に突き落とす。
後ろの金髪の男…沢田家光。つまり、ツナの父さんは傍観を決め込むつもりらしく、わずかに表情を歪めた私をにらむように見据えるだけ。……まあ、あんまり関わりたくないから、いいけれど。
『家庭教師ヒットマンREBORN』に出てる重要キャラに…人に出会ったのは、多分両手で足りるくらいの回数だ。雲雀恭弥と、骸と千種と犬。ああ、あと白蘭も入れたって、本当に両手で足りてしまう。
私は如何して、あちらの側にはいけなかったのだろうと思うけど、これは白蘭が仕組んだことだろうから、諦めた。雲雀恭弥のところに飛ばされなかったら、そもそもこの世界には来ていないのだから。


「思っていたより、普通の奴なんだな」

リボーンは前に出ながら、私を見上げてそう零した。私は彼の言葉の意味がつかめずに、首を傾げてみせる。

「何のことですか」

と私が言うと、彼は沢田家光を振り返り、「俺が話すぞ」と零す。
彼は好きにしろというように肩をすくめ、其れを合図にバジルが引っ込んだ。…ほんとうに、何なんだろう。いっそ怖くなってきた私に、リボーンは皮肉げな笑みを浮かべる。帽子の上に乗ったカメレオンが、彼の腕に移動した。


「お前、ヒバリの家に住んでるんだってな」
「…え、?」


彼の言葉は自分の予想していたものとは違い、私の口からは間抜けな声が飛び出る。
ロータスイーターとか、そういう話だと思っていただけに、思わず気が抜けて、頷いてしまう。
彼は「しかし、あのヒバリが群れるなんて、信じられねー話だな」と、ひとりごちる。そんなの、私だっていまだに信じられない。とにかく、何か嫌な予感がするから帰りたい。
寄り道をしすぎると怒られるし、怖いし、痛い思いをするし、REBORNのメインキャラにこれ以上関わったら物語が変わってしまいそうだ。だから、早く離れなくちゃいけない。早く逃げなきゃいけない。…それ、に。


バックに要るバジルと家光は、ヴァリアー編に移行したという証拠だ。
その癖雲雀恭弥は毎日無傷で帰ってくるし、指輪をしているというわけでもない。嫌な、予感。


「ヒバリに、渡して欲しいモンがあんだ。ヒバリの落し物でな」

そう言って取り出したのは、銀色の指輪。嫌な予感が的中し、私は目を伏せた。これを受け取ってはいけない。そう、心の中の私が言う。


「……雲雀恭弥さんは、そんなものもって居ません」
「…チッ」


リボーンは舌打ちすると、次の瞬間には銃を私の眉間に標準を合わせて突きつけていた。
「リボーン殿!」と、バジルが声を荒げる。家光は、傍観のままだ。


「…ごちゃごちゃ言ってねーで、ヒバリに渡せばいいんだ」


彼はそう言うと、私の顔面にリングを投げつける。
条件反射でキャッチしてしまったそれは五角形を半分にしたような形。真ん中で途切れている、雲の模様。


「あの、これ――」

帰そうと思って顔を上げると、いたはずの三人は忽然と姿を消していた。途方にくれた私は、どうしたらいいかも分からないまま、その場に立ち尽くすしかなかった。



――そして、今に至る。
(08/12/05)


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