いったい、これはどういう状況なんだろう。

視界に広がるのは私よりも高い彼の肩と、そこから覗く青い空。回される腕がぎゅうと力を増して、より近付く彼との距離。う、と小さく唸ると背中に回されていた手が私の髪を解くように撫でた。


「こ、小西く……」
「…ごめん、もう少しだけ」

このままでいさせて。

囁くようにそう呟かれて、今まで聞いた事のない甘い声に耳の奥が溶けてしまいそうになる。こんなに近くで男性の声を聞いた事もなければ、ましてやそれが何とも思っていなかった同級生の男の子に抱きしめられながら、なんて思ってもみなかった。
ドキドキと足早に過ぎていく心音が、彼と引っ付いている部分から伝わってしまいそうで顔が火照る。力強い彼の腕が、なかなか私を離そうとしない。
こうなってもう、どのくらい経ったのだろうか。解るのは肩越しに見える空に浮かぶ雲の流れだけだった。





抱きしめられて数時間



(そろそろ、心臓がもちません。)

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