「かすがー、かーすがー!」
「煩い。何の用だ。私は忙しいんだ」
「そう言わずにさぁ、ちょっと頼みたいことがあるんだ。かすがにしか頼めなくてさぁ……お願い!」
「だから、何だと聞いてる」
「実はカクカクシカジカで──」
「……………」









 HR(ホームルーム)というものは各学年違うというもので。各学年の文化祭役員が集まったのは3日後になった。集合場所は生徒会室、の隣にある会議室だった。
 名前と元親も文化祭役員に決まったため、こうして会議室に集まっていた。名前たちよりも早くに来ていた人もおり、その人たちはクラスごとに机に置かれている三角型の名札を頼りに座って、楽しく話していた。








「俺たちの席はー………」
「あ、教卓の真ん前だよ」
「げっ!!マジかよ……ツイてねぇ…」








 名前は元親の言葉に首を傾げたが、隣同士の席に着いた。すると、予想もしなかった人たちに元親と名前は遭遇したのだった。







「あっれー?鬼の旦那じゃん」
「あ?……おっ、猿飛じゃねーか。かすがも一緒とはなぁ」







 席のことで落ち込んでいた元親は後ろから知っている声を聞いてあっさりと機嫌を直した。
 名前もそのことに驚いて後ろを振り向くと、名前たちの後ろには名前達とは別クラスの佐助たちがいた。元親と佐助は意気揚々と会話をしており、何か話した方がいいかな、と名前はかすがの方に顔を見ると、それに察したのかかすがも名前の方を向いた。







「お前が名字か?」
「え?あ、うん。名字名前って言うの。初めましてだね」
「かすがだ。よろしく」
「うん、こちらこそよろしくねぇ」







 何故名前の名字を知っているのかは気にせず、ヘラッと名前が笑うとかすがも微笑み、お互い握手をした。
 そんなとき、ガラッとドアの音が勢いよく空き、その人物は教卓の前に来た。名前と同じ女子生徒だが、左腕に「生徒会」と書かれた腕章がついていた。








「えー、全クラス委員が揃ったところで、文化祭の会議を始めます。今日決めることは各クラスで決めてきて貰った文化祭のテーマを決めようと思います」







 生徒会の人が生徒に説明している間に、同じ腕章を付けているもう1人の男子生徒がチョークでサラサラと黒板にかいていた。
 右端の一学年の生徒から順にクラスで決めたテーマを言っていく。同時に黒板にもそのテーマを書いていった。







「次、2学年A組からお願いします」
「はい。俺ら2年A組で決めたテーマは《絆》です」







 元親が真っ先に立ち、クラスで決めたテーマを言った。それを言った途端、何故か右の1学年の方から笑い声が聞こえた。
 何が可笑しいのか元親と名前には分からなかったが、生徒会の一声で静まった。鶴と一声とはよく言ったものだ。







「何で笑うんだ?1年のヤツは」
「ベタだからじゃないー?それか今時絆って暑苦しいわーとかじゃないかな?」







 小さく言う佐助の言葉に元親は「あー…」と言って納得した。そして、佐助たちのクラスが言う出番が来て、かすがが立ち上がった。







「B組もA組と同じ《絆》です」







 そういって座れば、男子生徒は《絆》と黒板に書かれた下に「一」の字を書いた。まさか一緒とは思わず、元親と名前は驚いた。
 その後、続々とテーマを言っていくが、何故か圧倒的に《絆》と決めたクラスが多く、ついには《絆》と黒板に書かれた下の方を見れば「正」の字が2つと、「一」の字が入っている字が並んでいた。特に3学年のクラスのテーマが元親たちと同じテーマだったのだ。
 それを見た元親と名前は互いを見て可笑しくて笑った。席がくっついての隣同士だったため、かなり近い距離で笑った顔を見たことで胸が高鳴った名前だった。








「これはほぼ決定ねぇ。───《絆》のテーマが多かったので、《絆》で行こうと思いますが、何か意見はありますか?」







 先程まで笑っていた1学年の生徒も特に反論はなく、今年の文化祭のテーマは《絆》に決まったのであった。
 黒板の方も《絆》と書かれたところの上に黄色のチョークで花丸が付けられていた。
 名前は黒板の前にいる男子生徒を見て「花丸なんて可愛く書くんだなぁ」とよく分からないことを頭の中で思っていたことは誰もしらない。

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