体が勝手に動く。
今までそんな経験なんかなかった。
少なくとも物心ついてから私は大人しいほうではあったし、なんとなく考えてから動く人間だった。


だけど、その私がどこかに行ってしまったようで。


長曾我部くんのいるバスケ部の見学へ行った日…
いや、日直をしてから私は長曾我部くんが気になって仕方なくなっている。
話してたまらなく感じたずっと一緒にこうしていたいという気持ち。
気になって気になってもやもやしていた。

そして、その結果体育館の裏口からバスケ部の練習をこっそりと覗いていた。


本当に何の考えもなくふらりと立ち寄って、気付いたら練習試合で一人覗いて盛り上がっている自分がいた。
さらには長曾我部くんがシュートを決めるたびガッツポーズをしている自分がいた。


何故だかわからない。
それでもプレイしている長曾我部くんが誰よりも輝いて見える。
そして笑顔を見るたびに胸の鼓動が早くなる。


これまでこんな感情なかった。
確かに人の笑顔で和んだりすることはあった。
それでも、胸が苦しくなるのは初めてだった。



わからない。
わからない。わからない。
わからない。わからない。わからない。


自分が何を考えているのかは勿論。
どうして長曾我部くんにしか感じないのかもわからなかった。


『試合終了。
 レギュラー以外は解散だ』


悩んでいたら試合は終わったらしく、私も帰ろうとした時だった。
裏口の扉が突如開いた。
そこにいたのはよく知る顔。

「もう、名前ちゃんここにいましたか」
「鶴ちゃん! 
 何で、何でここにいるの!?」
「だって名前ちゃん一緒に帰ろうと思っても見当たらなかったので私ずっと探してたんですよ。
 それにその言葉そっくりそのままお返しします!!」


確かに日直の日以来、一緒に帰ってなかったなと思い出す。
そして、申し訳なく思う反面…鶴ちゃんに投げられた質問に答えることはできなかった。


「何でって言われても私にもわからないんだよね、ただ長曾我部くんが気になって」
「か、海賊さんにですか!?」

すごく驚いた顔をされたので思い出した。
そういえば鶴ちゃんよく長曾我部くんと言い争ってたけ。



『海賊さんが私のことを餓鬼だとかずっとそんな風に言うんです!!』
『この前私のお菓子取ったんですよ!!ひどいと思いません!?』



私が海賊さんって誰と聞いたのも懐かしい話。
思えば鶴ちゃんと仲良くなるのと同時に長曾我部くんを知った。
いくら二人が言い争っていたとしても、なんだか微笑ましくて長曾我部くんに嫌悪感を抱いたことはなかった。




「も、もしかして海賊さんを見てたら胸がきゅ〜となりますか」
「うん」
「もしかして海賊さんとずっと話していたいとか思ったことはありますか」
「うん」
「もしかして海賊さんがきらきら輝いてかっこいいですか」
「う、うん」

素直に答えていたものの、よく考えてみればとても恥ずかしい質問をされていた。

「ちょっと、鶴ちゃん」
「私が宵闇の羽の方への想いと一緒です…
 名前ちゃんそれ恋です!!」


私が…
長曾我部くんに…
恋…?

長曾我部くんに対する私の想いが恋。
つまり鶴ちゃんがいつも宵闇の羽の方こと、風魔くんに感じる胸の苦しさとかと一緒。


「恋!?」
「海賊さんでも名前ちゃんが選んだ相手ですから私全力で応援します!!」
「ちょっと、そんな大きい声で言わないで!!」
「ほらそんな可愛い顔海賊さんに見せないと意味がないじゃないですか!!」
「お願い、落ち着いて!!」




自分の恋心に驚きながらも必死に鶴ちゃんを落ち着かせようとする私に、ひとり盛り上がる鶴ちゃん。
結局もやもやした気持ちがはっきりとしたというのに恥ずかしさですっきりしたと感じる余裕は私にはなかった。



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