バスケの1回目のゲームのことを「第1Q(クォーター)」という。同じく2ゲーム目や3ゲーム目も「第2Q」「第3Q」という。また、このゲームは10分間ずつの試合となる。そしてこの試合は4試合ある。延長戦もあるが、選手の体力を考えればこの4試合で何とか3セット取りたいものだろう。
 また、この10分間の試合の後にも休息があり、第1、第3、第4Qの後の2分休憩のことを「インターバル」。また、第2Q後の10分〜15分休憩のことを「ハーフタイム」という。選手にとってはこのハーフタイムが頭を冷やせる唯一の休息ではないだろうか。

 これは基礎中の基礎のことを言っている。もっと詳しく知りたいのなら某バスケ漫画やテレビ等を見るほうが分かりやすいだろう。



 そして元親達の試合も第2Q終了後の休息中だった。
 そんな中、名前は大きい荷物を背負ってかすがと共に選手が通る道を通っていた。途中警備の人に鉢合わせするものの、名前の荷物を見るなり「マネージャーか」と勘違いをされ、そのまま奥に行かされた。






「何でマネージャーって言ったんだろ?」
「名字、気付いていないのか?」
「かすがちゃんは分かったの!?」
「………お前は天然なのか…?天然じゃないのか…?」
「?」







 そんなこんなで漸く元親達がいる部屋に行けた。少し緊張するものの、かすががリードしていってドアをノックした。
 すると出てきたのは同じバスケ部の部員の人だった。






「誰だい?」
「あの、同じ高校の名字と言います。これ!差し入れにと思ってスポーツドリンク持ってきました!」
「え、マジで?超嬉しいんだけど!おーい皆ー、差し入れが来たぞー」







 そう言えばぞろぞろと人が集まりだした。名前とかすがより背が高い人が多く、少し唖然としてしまう2人だった。
 名前の心の中では「長曾我部くん助けてぇ…」と叫んでいた。







「何々ー?差し入れってホント?」
「佐助!」






 佐助が見えた瞬間、かすがはどこか安心したような声を出してしまい、思わず手で口を押さえた。
 かすがもこの知り合いのいない背の高い人に威圧されてしまっていたのだ。







「おー?俺様を捜してた?捜してたのかなー?かすがちゃ………」
「さっさと受け取って私の目の映らないところに行け!!!」







 かすがが佐助に投げたスポドリは見事に佐助の顔面をめがけて行き、佐助は鈍い音と共に鈍い声を出してその場に倒れた。それを見た部員たちは今度は逆にその行動に驚いて唖然としてしまっていた。







「相変わらずだな、猿飛。大丈夫か?」







 そう言って佐助に手を差し伸べるのは元親だった。
 名前は元親の姿を見た瞬間、慌てて荷物の中からスポーツドリンクを持とうとしたのをかすがはちゃんと見ていた。







「だ、大丈夫………ありがとう。でもこれも愛の鞭だから───」
「まだ言うか?」
「ごめんなさい、何も言ってません」
「まるで夫婦まんざ──」
「お前ら仲良くあの世に逝きたいようだな?」
「すいません、何も言ってねぇっス」
「かすがちゃん落ち着いて!」







 あわあわと漫画だったら冷や汗が飛び散るような感じに名前はかすがを落ち着かせた。いつかのやり取りが思い出される。








「名字。さっきはありがとうな」
「え、ううん!長曾我部くんに伝わってよかった!お疲れ様です、これをどうぞ!」








 元親の隣にいつの間にか行っていた名前に元親は先程のお礼を言われると思っていなかったため、少し動揺する。が、名前はスポーツドリンクを手にしていたことに気付いてそれを元親の前に差し出した。
 少しの間きょとんとした顔をしたが、彼はまた笑って名前の持っているスポーツドリンクを手に取った。








「おう、ありがとな。あと1試合あるが、応援よろしく頼むぜ」
「え、2試合じゃないの?」
「俺らのチームは前半の2試合とも勝ってただろ?だからあと1試合勝てばいいんだ。今日は調子良いから3試合だけで終わりそうな、そんな感じがすんだよ」








 そう言いながら元親は先程貰ったスポーツドリンクのキャップを開けて喉を潤した。
 名前も話しながら皆にドリンクを渡しており、荷物の中身はいつの間にか空になっていた。
 彼があまりにも自信満々に言うので少し笑ってしまったが、彼女はその自信に掛けてみようと思った。







「じゃあ4試合で終わってしまったら奢ってもらうっていうのはどうかな?」
「何!?」
「おっ、いいねぇ!俺様もそれにのるー」
「あ?!猿飛、アンタ負けると思ってんのか!?」
「そーいうわけじゃないよー?でもそうやすやすと勝てる相手じゃないって思ってるだけだよ。前半だってマグレだったかもっしょ」
「では私ものろう」
「アンタまでかよ!」







 会話をしていた者から聞いていた者までが笑いが溢れ、部屋中に笑い声が響きわたる。
 すると試合開始の合図が聞こえた。もうそんなに経ったのかと少し寂しく感じる名前だが、元親の一言でそれはなくなった。








「名字!もし本当にこの試合で終わったらアンタに奢ってもらうからな!覚悟しろよ!」
「えっ!?」
「約束な!ぜってーだからなー!」







 そういってバスケ部の皆は部屋から出ていった。
 まさかの約束をされてしまった名前はポカーンと口を半開き状態のまま立っていた。そんな名前を起こすようにかすがは頬を軽く叩く。







「はっ……」
「大丈夫か?」
「うん、大丈夫。でも……」








 お金あるかどうか心配だなぁ、とぼそりと呟く名前だった。色んな意味で名前の鼓動はかなり早くなっていた。








 試合は三連勝した元親たちのチームが勝ち、名前はお財布とご相談しているのだった。








「そういえばこの近くに祭りの屋台が立っていたぞ」
「えっ、そうなの?」
「私と猿飛にも奢ってくれるな?」
「ふええええ………」

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