しばらくの間、私の日常生活は文化祭委員と部活と授業が混ざり合ったものになりそうです。






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 今日は朝から体育。外での授業らしい。隣の上杉先生のクラスと一緒に授業をするけど、男女は別々で授業をする。先生は男子はあの熱血すぎることで有名な武田先生。私らは上杉先生。一緒に座っているかすがさんが上杉先生のことをもの凄く慕っているせいか、目がもの凄く輝いている。同じく一緒に座っている鶴ちゃんが言うにはバラが見えるらしいけど……………どこにバラがあるのかな?あれ、でも花びらがかすがさんの周りに落ちてる。何で?
 とりあえず、私らはバレーをするらしいので、バレーボールをかすがさんが取りに行ってくれた。










「あ、男子はバスケなんだ」







 ふと半分に分かれてやっている男子の方に目をやればバスケをやっていた。しかし、私の思考はまた別のものだった。
 そう、バスケと言えば────







「名前ちゃん、どうしましたか?」
「へっ!?……あっ、えと、何でもないよ!」
「………………へぇー?そうなんですかぁ」







 あ、鶴ちゃんにバレたかも。その証拠にもの凄く顔がにやけてる。
 私が長曾我部くんを見ていただろうという予想をされたかも……







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「長曾我部の旦那ー」
「おー、猿飛」
「鬼の旦那の方がいい?」
「どっちでもいいぜー」








 ただいま絶賛授業中ー、まぁ、武田先生は真田の旦那と掛け声してるから目を盗んでこうして鬼の旦那と会話してるんだけどね。
 しっかし、鬼の旦那は気付いているのかな。この視線の先の人のこと。この際だから聞きたいこと聞いちゃおうかな。







「鬼の旦那ー」
「なんだ?」
「名字名前ちゃんって言う子、鬼の旦那の友達?」
「名字か?まぁ、同じクラスのやつだな」
「それだけ?」
「なんだよ、急に。それだけだぜ?」
「……………へぇー」







 名字ちゃん可哀想に。でも、最近のことみたいだから気付かないのも無理はないか。
 でも、鬼の旦那は相当手強いよー、名字ちゃん。恋とかそんなんにはかなり疎い人だし。

 俺様がなんとか後押ししてあげるかぁ。








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 何だかんだで今日最終の授業、6時限目の授業が始まる直前。6時限目はお爺ちゃん先生こと、北条先生の国語の授業。忘れ物をしたら授業の半分が削れるほどの説教をするというので結構有名。
 しかし、この時の私は失敗をしてしまっていることに気付かなかった。

 ボーッとしていたせいで授業の用意をこの直前までしていなく、やっと現実に戻って机を漁って教科書とノートを出そうとしたとき──






「…………あれ、教科書が……」







 そう、教科書を忘れてしまっていたことに今更気付いた。しかし、時既に遅し。授業が始まるチャイムが鳴ってしまい、他のクラスからも教科書を借りられなくなってしまった。
 あぁ、私は最後の最後でやらかしてしまったんだなぁ………と心の底でズンと重い何かがのしかかる。



 北条先生は時間通りに来て、授業が始まった。どうか北条先生がここの席まで来ないで、と願うばかり。
 だが、それは叶わなかった。あっさりと私が座る列の間に北条先生は来たのだ。あぁ、バレたよね、これ……







「む?名字、教科書はどうしたのじゃ?」
「えっ…………えと、あの……」
「忘れたのか?」








 嘘を付いたところでバレるから正直に忘れたと答えた。すると、みるみるうちに北条先生の顔は赤くなり、怒り寸前と化した。







「お主は忘れ物はしないと信じとったのに、したぢゃと!?最近の若者はなっておらん!!大体────」








 あー……始まった…………皆も「始まった」とばかりに呆れて知らぬふり。私はもう止まらない先生の話をとにかく聞くだけ。だから北条先生の授業は一番遅くなるっていくのだと気付かない先生は色んな意味ですごいと思う。
 ………まぁ、説教するのも教育だけどね。
 しかし、辛い。辛すぎるよ………そんなときだ。







「なぁ、先生。忘れちまったモンは仕方ねぇだろ。隣の俺が見せるからそれでいいだろ?」
「なんぢゃ、お主はワシに説教するのか!」







 まさかの長曾我部くんが割り込んで来てくれた。だけど何故か先生は自分に説教していると勘違いしている。






「ちげぇよ、授業するんだろ?だったらこっちが見せた方が授業しやすいって意味だろ?ちげぇか?」
「う、うむ………今回は見逃してやろうかの」







 そう言って北条先生は私を後にして授業に戻った。

 一方、私は机を近付けて長曾我部くんに教科書を見せてもらう形を取らせてもらった。







「………あの」
「説教長引かなくてよかったな」
「うん。………ありがとう、ございます」
「何で敬語なんだよ」







 先生に聞こえないように小さい声で言えば、小さく笑った。
 笑った顔が可愛いと思ったのは内緒。


 今日、教科書忘れてよかったと思ってしまったのはこれが初めてだけど、これからは気をつけようとも思った。
 これ以上笑顔に引かれたら心臓が破裂しそうだから。

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