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黄瀬と1on1をしてる最中、雨に降られた。
公園から黄瀬の家が近いということで強い雨に打たれながらも俺たちは黄瀬の家まで全力疾走し、交替で風呂にも入った。濡れた服は黄瀬が洗濯してくれたらしい。
そして今。空調管理が行き届いた部屋で俺はただ、黄瀬の隣に座っていた。何もすることが無くただぼーっとしていた。隣りのやつも後ろにあるベッドに頭を預けて目をつむっている。
「黄瀬」
「なんスか」
無表情の黄瀬が唇だけを動かした。犬の時のほうが断然可愛げがある。作り物めいた顔がもっと作り物っぽく見えた。
だけど何故か傍に居たくなる。頭を撫でてやりたいとかそういうものではなくて、…なんて言うんだコレは。
まあ人柄かもしれない。容姿だけではなく人を惹き付けるものを持っているのだろう。それ故にたまに息抜きが必要なんだなと思った。
「俺帰るわ。てめー疲れてんだろ」
「ハァ?帰んなよ」
あー帰らないでほしいっスと額に手を置きながら言い変えられた。
その言葉と仕草に負けて立ち上がりかけていた腰を落とす。この服と傘を借りると言いかけたがもう出てこない。
「涼んでて、あとちょっとだけでも」

その胸のない、しかも自分と同じように大きい身体を無性に抱きしめたくなった。これでも一応好きあっているのだから許可なんていらないはずだ。
いつもなら俺の腕がすぐに伸びてた。何も考えないでただ伸ばしてた。
けれど今は、黄瀬から腕を伸ばしてもらいたい。そう思った。

「黄瀬ェ」
「なんスか」
さっきよりも優しい顔で黄瀬は唇を動かした。
「こっちこい」
「こっちこいって…隣にいるけど」
相変わらず俺様だなーと口端が上がったのを俺は見逃さない。ほれ、と片腕を後ろに回して無理やり黄瀬の頭を自分の肩にぶつけた。
「ちょ…痛いっス」
何すんだよーとキャンキャン吠えるのかと思っていたのに黄瀬は頭を俺につけたままだ。しばらくそうしていると不意に黄瀬の頭が動いた。
「やっぱりまだ居てほしいな」
アンタに居てもらいたいんス。そう耳に囁かれる。熱い吐息付で。
「…うぜえ」

知ってる、と黄瀬は笑った。


それでは誘惑の準備を




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