祭り




「やっぱりいつ見ても祭はいいね」
「あまり私から離れてくれるな」

でも早くしないと金魚がいなくなっちゃう!と、玲は金魚すくい屋を目指して走り出す。心配しなくとも金魚はいなくならないが。最近体調を崩しがちであったがために祭りの日に外に出れる事が嬉しいのだろうが無惨からすると心配で目を当てる事が出来ない。

無惨は人混みをかき分け、先を行く玲の手を掴み、捕まえてやったと無惨が誇らしげに言えば、玲は捕まっちゃったと破顔をしながら返事をした。スルりと指を絡めてしまえばもう逃げられない。

祭りの喧騒の中、トクり、トクりと互いの脈打つ音が手を越して聞こえてくる。この幸福がいつまでも続きますように、と恋人達を祝福するかのようにドンっと花火が高く上がった。

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