かき氷




「氷か?」
「えぇ、氷売りさんが先程通りかかったので」

玲はかき氷機で削り終えた氷を入れた小皿を無惨に手渡し、色とりどりの液体が入った入れ物を机に並べ始めた。一体なにが始まるというのであろうか。

「シロップまで取り寄せたのでお好きにどうぞ」

おすすめはこのいちごのシロップですよ。それとも抹茶でもかけて小豆でも乗っけましょうか?と、聞かれ無惨は玲の勧めであったいちごのシロップかけて一口頬張る。とても冷たい。

平安の世にも氷は存在してはいたが、人の身であった無惨の身体は弱くあまり身体を冷やすような食べ物は鬼となった今でも遠ざけてきたのだが……なるほど、氷も夏も悪くは無い。太陽が鬼を殺さんとして照り続ける夏と身体を壊しにかかってくる氷の評価が無惨の中で変わった気がした。

そんなに急ぐと頭が痛くなってしまいますよ、と、注意する玲の言葉を後目に無惨は茹だるげな暑さを除かんと、美味いと一言零しながらかき氷を勢いよく口に運ぶ。そして案の定無惨は頭を抑え、その様子を見ていた玲はだから言いましたのに、と呆れ声漏らした。夏も氷も善し悪しである。


前へ次へ