1 翠川来夢が魔界に来て4年半が経ったある日のこと。 来夢はいつものように午前はリネ・アークに魔法を教わり、午後はアルバイト(魔王の雑用係)のために魔王城に訪れていました。魔王の執務室をコンコンと控えめにノックをしてから中へ入ります。 「失礼します」 「あ、翠川?」 「森山くん!?」 何故か中には魔王様はおらず代わりに森山久遠がいました。来夢は半年ぶりに会う知人に少し違和感を感じました。 「久しぶり。元気だった?」 「うん、私は元気だよ。森山くんは……何かあった?」 「……いや」 何かあったようです。 しかし来夢は深く聞くことはせず、ところで魔王様は?と話を変えました。 「リュウなら多分」 「久遠さまぁー!」 「げっ」「……え」 いきなり窓が開いたと思ったら可愛らしい少女が開いた窓から入ってきて久遠に抱き着きました。久遠は欝陶しそうに少女を自分から引きはがしました。そんな少女の背中には羽がありました。その羽で3階まで飛んで来たのでしょう。 「久遠さま、来る時は来るって言ってくださらないとお迎え出来ないじゃないですかぁ」 「いらねぇよ」 「やーん。冷たいですぅ……」 「あの、誰?」 来夢の声にいち早く反応した少女は来夢を見て驚いたようなショックを受けたような顔をしていまた。 「まさか久遠さまの彼女さまですかっ!?」 「違います!」 「ジャックの嫁だ」 「!?」 間違ってはいないけれどそうはっきり言われると恥ずかしくて頬を赤らめる来夢を見て、そうなのですかと安心したように微笑んだ少女は自己紹介を始めました。 「はじめまして。ジェシカと申します!」 「初めまして、翠川来夢です」 「ライムさまはあの翠川家ですか?」 「あの、えっと……」 あまり家について触れてほしくない来夢に気付いた久遠は小首を傾げているジェシカにリュウは何処かと聞きました。不思議そうに久遠を見上げつつ「リュウさまは」と言おうとしたら部屋の扉が開きそこから魔王リュウが現れました。 |