fairy tale



name change 

それはとても不思議なお話だった
シンドバッドが書く物よりも滅茶苦茶で
とても現実にこれが起きるなんて思えなかった

けれどそれは凄く面白くて
私は色んな人にその書物を見せてまわった

ある人は呆れ顔で笑い
ある人は文字なんて見たくないと顔を顰め
ある人は私らしいと頭を撫でる

けど皆見てくれない
私は不貞腐れて書物と一緒に中庭に寝そべった
ああ、知ってる?この書物とても色々書いてあるの
なんて近くにいたパパゴラスに話しかける



赤い頭巾を被った女の子が狼に食べられたのに生きていたり

襲い掛かるトランプの兵士から女の子は逃げたり

とても小さい女の子がもぐらと結婚させられそうになったり

本当は綺麗なのに全身灰まみれな女の子がいたり

沢山の人に愛されながらも月に帰る女の子がいたり

そうそう、蛙にされた王子様が金の鞠を拾う話もあった

人間ではない女の子が王子に恋をしたり

悪いことをしていないのに塔に幽閉される女の子がいたり

おかしの家に辿りつく兄妹だっていた

最後のお話は白く黒く赤い美しい女の子の話



こんなに素敵な物語なのにどうして皆見てくれないのかな
不平不満をパパゴラスに告げていると、大きな影が落ちてきた
ああそうだ、きっと彼なら聞いてくれる
読んであげたら気だるそうに、でもちゃんと傍で話を聞いて感想を言ってくれる

私は影の持ち主に寝そべったまま笑いかけた

「ねえマスルール!」





(全てを知ったならその先は)