大広間に通され謁見が始まる
ここぞとばかりに着飾った奴らの姿は、何度見ても滑稽だと思う
僕も傅き飛び交う言葉を聞き流しながら周囲を見た

澄んだそれが溢れ返っている
なんて、なんて素敵な国なんだろう

「如何致しますか、シン」
「うーむ…」

王の返事はあまり色好くない
このままでは引き取って貰えない可能性がある
嘆息して、不躾ながらも立ち上がった

「シンドバッド王よ!どうぞご覧いただいてから是非をお決めください」

響き渡るその声は紛れもなく僕の、少年の声
ベールで顔半分を覆われているが装飾から女と思っていた人々のどよめきが聞こえる
許可を得て一歩前へと進み出た

「世にも奇妙な幻想世界を―――ほんの、一時だけ」

次の瞬間ベールを脱ぎ捨て衣装のいくつかを豪快に裂いた

隙間から見える四肢の細さは女以上
しかし紡ぎ出す歌声は少年そのもの
舞いは女性のように滑らかに、男性のように荒々しく

と思えば一転して可憐な少女の囁き声に、大胆不敵な振る舞い
5分程でぴたりと僕は歌も踊りも止めて再び傅いた

「国王陛下、どう――」

問い尋ねる声は途切れた
輝かんばかりのそれを纏う姿を見つけたから



此処からが僕の本当の物語
きっと、貴方に会うために僕は今日まで生きてきたんだ





結果から言うと僕は王に雇ってもらえた
世話をしてくれた彼らも、この国の一員となって暮らしている
商人達はよく知らない。いくら聞いても誰も答えてくれないから

でも多分、因果応報にはなっているはず
それは人間に平等に降りかかるモノだから

与えられた部屋のベッドに寝そべって考える
誰もが喜んでくれたあの時、唯一と言っていいほどに顔色を変えなかった彼を

「何が駄目だったのかな…」

右手を上げて眺める
自分で言うのは嫌だが、顔立ちは悪くない
むしろ良い方だと客観的には捉えれる

衣装や装飾品だって一番見栄えが良いやつだ
踊りも歌も、精一杯のものを見せた
そうすれば皆称賛してくれたのに

一体、何が

「アイオス様」
「はい、どうぞ」

扉を叩かれ答えれば、うら若き乙女が入ってきた
彼女は僕に与えられた専用の侍女
部屋に引き篭もりがちな僕の代わりに、面倒事を請け負ってくれている

「シーツをお取替えいたしますね」

商人達が口煩く僕を清潔な場所にと言ったおかげか、驚くほど日に何度も掃除される
今更あれは嘘も方便ってやつでなどとは言えない
彼女がシーツを換えているのを眺めていると、少し躊躇ってから話しかけられた

「あの…アイオス様は外出とかなさらないのですか?」
「呼びたてがあればします。ああ、掃除の邪魔でしたら出て行きますよ」
「い、いえ!そんな!」

滅相もない!と慌てて謝罪するのに微笑んで、僕は部屋を出た
確かにシンドリアに来てからもう3日が過ぎたけど5分以上部屋から出たことはない
塔の一番下まで降りて空を見上げた

「…あっつ」

予想以上の日差しの強さに慌てて建物の影に隠れた
こんな中に長時間居たら死んでしまう
屋根を有効活用しながら散策を始める






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