ぴゅーっと草笛を吹く
音色は風に乗って飛んでいく
中庭の木陰で僕は休んでいた

騒動の1週間後に王が帰ってきた
あの後にこってりジャーファルさんやヒナホホさん達に叱られまわったのに、王にいたっては仕事そっちのけで丸1日説教された
勿論別途でシャルルカンさんや将軍にも、それはもうどっぷり

ただ怒られているはずなのに嬉しくて
僕は何度か笑ってしまって更に怒られた

お咎めはとくに無かったけど、生活は少し変わった
これしかないからと、僕は宮廷音楽家の見習いに就けてもらった
歌や踊りだけでなく楽器もやるとは聞いてなかったけど

おかげで朝起きて夜寝る規則正しい子になりました
そしてもう1つ、大きな変化があった


『ところでそれ、胸…よね?』


帰り道にヤムライハさんが気付いたのは、僕の胸の大きさ
僅かについた筋肉じゃないかと思ったそれは触ってみると柔らかい
じゃあ女になったのかというと、そうではなくて

僕の下半身は未だに男のまま
ちぐはぐで、でもまあ良いかなと思ってる
文献によれば時が来ればきちんと男女どちらかになるそうだから

ヤムライハさん曰く、本来それは15,6で決まるけど、僕は特殊な生活環境にあって過度のストレスや魔力不足、及び黒ルフの吸収等々で不安定になっているのではないかと

「にしてもちょっと気になるな…」

先端がというか。自分が膨らむとヤムライハさんがいかに凄いかよく分かる
草笛を銜えたまま立ち上がると、マスルールさんが茂みに隠れて寝転んでいた
そっと近寄って顔を覗き込む

「…好き、です」
「知ってる」
「うわぁ!お、起きてたなら言ってください」

言うより早くに来ただろう
とでも言いたそうな瞳で彼が身体を起こした
僕を膝の上に乗せて抱き締める

こういうスキンシップは、個人的にはとても嬉しいし美味しいんだけど、同時に複雑な気分になるというか、しかし相変わらず人の目を気にしないよなぁこの人って
以前と変わらず僕の部屋に普通に来るし

「言い忘れてたが、」

声がしたのでそちらを見ると、暫く沈黙が流れた
じっと見詰め続ければ観念したような表情になる

「お前だから…したんだ」

乗せたばかりの僕を下ろして彼が立ち上がる
足早に去っていく後姿を、ぽかんと口を開けて見つめる
どこに、どうかかって、そういう発言が、えっと

「…!うわ、えっ」

熱いってもんじゃない
溶けそうなぐらい身体も顔も赤くなって、その場に寝転んで悶えた
ああ、もう、恥ずかしいけれど急いで追いかける

「マスルールさん!」

不完全な僕ですが
もしかしたら男になってしまうかもしれませんが
ですが、貴方を想う気持ちなら、誰にも負けないと思っていますので



「これからも宜しくお願いします!」





世界は綺麗で穢くて
僕はいつも誰かに守られて生きている

それは罪かもしれない
いつか本当の罰を受ける日がくるかもしれない
幸せの対価が一度に襲ってくるかもしれない

弱い僕は震えて逃げるだろう
1人で立ち向かえる勇気を持ち合わせてなんかいないから
また泣いて、何度だって間違えて、それでも

全てに等しく降りかかる"死"の瞬間まで
僕は君を想い、胸を張って愛してると高らかに謳おう



光り輝くあの世界の1つになるために





phallic girl
(男でも女でもない僕の、初めての恋物語)






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