ツナの学校に向かう途中、困っていたから声をかけた
案の定道に迷ったと彼女は地図を見せてきて
知っている場所だったから懇切丁寧に教えた

「Grazie Arrivederci」

お礼に彼女は流暢なイタリア語でそう言った
まさか日本で聞くとは思ってなくて、俺は少し面食らった表情をする
その隙に彼女は軽やかな足取りで去って行った

きりっとした眉と大きな瞳
程よく白い肌にきゅっと結ばれた口許
薔薇のような赤い髪に、すらっとした脚

最後に見せた微笑に全部持っていかれた

「ボス、遅刻するぜ」
「あ、ああ…」

可愛い弟に会いに行くっていうのに
未練がましく俺は彼女の歩いていった方向を見る
そこには勿論誰も居なくて



だけど彼女の言葉は本当になる



「Salve……キャバッローネファミリー10代目ボス、跳ね馬ディーノ」

深夜ツナの家で眠る俺の上に堂々と乗っかっている
それもランジェリー姿で色っぽく
手にあるアイスピックが喉元に突きつけられてなかったら、大喜び出来るんだけどな

「Mi dispiace Addio」
「ちょ、っと待てっ!」

容赦なく掻っ切ろうとするアイスピックを間一髪で避ける
舌打ち音と共に、脚を絡め取られる
しまった、と思ったが抵抗する時にバランスを崩し、ベッドから雪崩れ落ちた

彼女も落ちるのは想定外だったのか
小さく悲鳴が上がって、結果的には床に転がり俺が圧し掛かる形となる

「っ、このっ」

眉間に皺を寄せて彼女が俺を押す
が、変に絡まった脚のせいで俺から退くことは出来ない
両手にあったアイスピックも遠くに転がっていて、そーっと俺は彼女の太股に付けられていたホルダーを外しベッドの下に滑り込ませた

「全く…日本に来てまで暗殺はないだろ、なあSignorina」
「…」

にこっと笑いかけるも彼女は無表情のまま俺を睨んでる
いや、どことなく悔しそうに見詰めてる

「ディーノさん!?」

扉を叩く音とツナの声が聞こえる
助かったとちょっと身体を起こした瞬間、彼女が俺の下で身動ぎ離れる
ヤバイ!と近くに落ちていた鞭を手に取ったが、彼女はまた綺麗に微笑んだ

ちゅっと唇にキスをされる

「なっ、」
「またねディーノ」

今度は日本語で挨拶をして
彼女は窓から逃げて行った
入れ違いにツナやリボーン達が入ってきたけど、俺はリボーンに叩かれるまで窓の外をぼんやり眺めていた






暗殺されかけたっていうのにその子に惚れるなんて
ロマーリオ達に言ったら笑われるか怒られるに決まってる
そう思って口を噤んで、車を運転してツナの学校に向かう

「さってツナはどこにいる…」

校門前で探しに行こうと車を降りた時
視界の端に薔薇が舞っているかのような赤が映る

この学校の制服を着て颯爽と歩く姿
ちらりと俺を見て、彼女は立ち止まり此方を見た

「あら、こんにちは」
「お前何で…!?」
「いけない?生徒が学校に通っちゃ」

学校。確かにそうだが、この見た目や色香で中学生かよ
口をぱくぱくさせる俺を気にせず暢気に腕時計を見てる

「風紀委員長に怒られそう。それじゃあ、またいつかの夜に」
「待ってくれ!」

咄嗟に細い腕を掴む
振り返った彼女は少し驚いた表情をしていた

「――Come ti chiami?」

不意に出た言葉を聞いて彼女はもっと目を見開いて
そして、面白い物を見るような、そんな瞳で俺を真っ直ぐ捉える
距離が近くなってキスする寸前まで顔が寄せられる

「なまえ。貴方を殺す女の名前を、忘れないでね」

綺麗に微笑むなまえは今まで見たどの女より綺麗で
難儀な奴に惚れこんだものだと、思いながらもキスをした





Non ti faccio dormire per tutta la notte






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