「みょうじさん、俺と付き合ってくれませんか!」
「ごめんなさい!私好きな人いるの!」

何とも奇妙な場面に遭遇したものだ
隣のクラスの男子生徒が、俺と同じクラスの女子生徒に告白をしている
言っておくが最初植え込みの裏にいたのは俺であり、あちらは後からきたのだ

グラウンドとは逆の裏庭に昼休み…まあ妥当な行動か
しかし不可解なのはこの次だ

「もしかして、不破とか…?」

そこで何故俺の苗字が出てくるのだろうか
実に理解しがたい。理解できないものがあるのは気になるので、しばらくこの光景を眺めていよう
ひとまず、状況整理をする

男子生徒については俺はよく知らない
時折廊下や体育で見る顔といった程度だ
一方、女子生徒については確か名前がみょうじなまえだったと記憶している

成績は中のやや上、運動は女子のわりにサッカーが上手かった
俺が彼女を記憶している理由のひとつはそれだ
マネージャーである小島から、勧誘してほしいと何度か言われた

それ以外で覚えているのは妙に話しかけてくるぐらいだ
ああ、そういえば誰かの顔に似ている既視感もあるな
関係性は良くてそこそこ話す程度の人間、といったところで俺の名前が出る理由はさっぱり分からない

「え…えへへー、うん、そう!」

分からない俺を置いてきぼりにしたまま事態は進んでいく
あろうことか彼女は明るく答えた
男子生徒の顔が絶望したように見える

「不破のどこがいいんだよ!アイツ、クラッシャーだぞ!?」

ふむ、まあこれも妥当な言動だろう
間接的とはいえお前の告白を壊したことにもなるしな
そう冷静に考えている俺とは逆に、みょうじの表情はどんどん明るいものになっていく

「どこが?全部に決まってるじゃん!あの髪の跳ね具合や瞳の鋭さ、頭も良いし運動もできて性格だって媚びずに生きて、男らしくて本当に素敵…!こないだだって図書館で他の人に本とってあげてて、とってもらった人泣いて喜んでたんだから!ああ、あとそれからね」

確かに本をとった記憶はあるが、あまりに幼児向けの本だったから別の本を見てはどうだと言ったんだがな
流石にあの涙は感謝ではないことぐらい自分でも分かる
ポジティブな脳味噌に妙な感心を抱きつつ聞いていると、予鈴が鳴り響いた
しまった。もう10分近く俺の良い所を語っているのを聞いていたのか

「本当に最高でしょ不破君って、って…あれ」

陶酔から目覚めた彼女の傍に男子生徒は居なかった
好きな相手が好きな者の好きな所なぞ、普通ならば聞きたくないだろうな
もう出ても良いだろうとその場から立ち上がる

「みょうじ、本鈴が鳴るぞ」
「不破君!うん、じゃあ次理科室だから一緒に行こうよ」
「その前に教室に荷物を取りに行かねば意味がない」
「遅刻したら一緒に怒られようね」

相変わらず彼女の考えはよくわからない
俺のことが好きだというその思考を理解できるまで、もう少し傍に歩みよってみようと思う













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