「…おい、起きろ」
「―――えっ?」

落ちてきたのは影じゃなく声だった
寝そべったまま見上げたはずの私の口元にはだらしなく涎が垂れている
起き上がって慌てて拭うと隣に座る彼を見る

周囲には色んな書物が散らばっていた
それを怪訝そうに彼は眺めている

「私寝てた?」
「ああ」
「そっか…どこから夢だったのかな」

首を傾げると彼も不思議そうな顔をした
だから私は夢を話す
色んな世界に行って色んな王子やお姫様に会って、とにかく幸せにしてあげようと動き回った夢

「そういえば王子様とか、どことなく似てたなぁ」
「…柄じゃない」
「私もそう思うよ」

けらけら笑って書物を拾い集める
日はすっかり暮れていて、返しに行かなきゃ怒られちゃう
丁寧に書物を纏めていくとふわりと文字が踊りだしたような気がした

「どうした」
「あ…ううん、何も」

沢山のそれを彼が持ち上げる
私はその後ろをついていく
背後から聞こえた声に私は振り返って―――笑った

「姫なんて、柄じゃないよ」





(ねぇ、次のお姫様はどんな恋物語を紡ぎだすの?)





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テーマ「人外ファンタジー」
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