がつがつ食べるしごくごく飲むし
体格や性格から大丈夫だと油断していた

「ぷふふっ、面白いこともあるもんだねぇ〜」
「お黙りピスティ」
「落書きしてやろうぜ。誰か書くモン持って来いよ」
「お止めなさいシャルルカン」

八人将+王+親しい者の集まりで飲み会を開いた
先日、ようやくシンドバッドが仕事を仕上げきったのだ
ここでご褒美をやらないと、また仕事をしなくなる
と、ジャーファルと計画した飲み会である

ドラコーンの奥さんやらヒナホホの一家やら
食客である私やアラジン君達も巻き込んで飲み明かしているわけだが
気心しれた者しか居ない空間というのは、人をダメにさせるらしい

謝肉宴では無礼講とはいえ、国民や部下の目がある
よって羽目を外すのは酒好きの馬鹿ぐらい
しかし今日は逆に普段マトモな人間程ダメになっている
…勿論、普段ダメな人間は、もっとダメになっている

「だってコイツがこんな無防備に寝るなんて滅多にないぜ」
「いつも屋根の上で無防備に寝てるよ」
「マスルールくんも膝枕してもらうんだー」

そう、普段マトモな人間、本当にマトモかどうかは置いといて
謝肉宴でもなかなか酔わないコレが、私の膝を枕にしてすやすや寝ている
おかげで一歩も動けないし酔っ払いに絡まれて鬱陶しい

「本当に腹立たしい寝顔…少し小突いていいかな」
「…俺が言うのもなんだけど剣は止めろよ。流石にヤバイだろ」

腰に差してある大剣を手にすると、止められてしまった
ご機嫌取りに持ってきてくれたお酒を勢いよく飲む
大体ジャーファルは何してるのジャーファルは!こういうのを纏めるのはあの人の役目でしょう

「脚痺れてきたし…重いし重いし重い」
「部屋に運べる人間は皆アレだもんね」
「いい大人が情けない。もっと優雅に飲み、な、なに起きたの?」

がくんと体が揺れて酒を少し零してしまった
何事かと思ったら、大きい子供が目を覚ましたみたい
杯を持っている腕と反対の腕を引っ張られた
丁度良いから早く退いてもらおうと、手で退くよう命じる

「酒…」

ちょっとだけ頭を浮かせてテーブルや座席を見る
まだ飲む気なの。この飲んだくれが
呆れて物も言えず、残っていた酒を全部飲み干した

「ほら起きたなら退いて。ピスティ達が五月蝿いから」
「うるさくないよ。ちょーっと噂話してるだけだよ。ねえねえ聞いてセレーナとマスルールってさー!」
「こら止めなさいピスティ!ああもう早く退い…」

目の前が真っ赤になった
頭がくらくらする。息がしづらくて、熱も帯びてきた
得体の知れないモノが口内に侵入してきて全部吸い上げた時、ようやく事態を把握した
したからと言って声をあげれる状況でもなく
成すがままに私は弄ばれた

「は…っ、アンタ本当に最低…!」

睨んでみるも、当の本人は何処吹く風
それどころか満足そうにまた膝の上で眠りだした

「おっ、確かに珍しいなー」
「でっしょー。やっぱりデキてるねコレは!」
「将来は安泰だな!…怒らないのか?セレーナ」
「五月蝿い…馬鹿は早く飛び降りなさい」

ピスティとシンドバッドがぎゃあぎゃあ喚いてる
ああもう、五月蝿いな本当に
頭がくらくらするのも顔が熱を帯びているのも、きっと全部お酒のせい
声が遠くに聞こえるのも、眠る顔がやけに綺麗に見えるのも
きっと、きっと









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