三大欲求
睡眠欲と食欲と性欲

これがどれか1つ欠如していると、ちょっと変な人が出来上がる
では、これが全てあるとどうなるか
答えは簡単。もっと変な人が出来上がる

「マスルールくんって性欲無さそうだよねーっ」

ピスティがケラケラと笑う
この子はお酒を飲むと一定量までは笑ってる

「良いじゃない…誠実そうで…真面目の何が悪いのよ…」

ヤムライハが俯きながら呟く
全く、2人は足して2で割るか、もう少しお酒を控えるかするべきだ
上司が酒と女好きだから仕方ないっちゃ仕方ないか

しかし、折角女性組で飲みに来たのに、出る会話は男の話ばかり
もっと可愛い話もしたいけど、ヤムライハがいる時点でそれは無理な気もしてきた

「で?どこまでいったのー?お姉さんに教えなさい」
「私ピスティと同い年だけど…」
「先に生まれたから私のほうがお姉さん!」

私はいつ生まれたか誰も知らないはずなんだけどな
酔っ払いに囲まれて私は溜息を吐いた

「どうも何もご存知の通り忙しくて会えてないよ」
「モルたんの修行相手してるしね。セレーナは暇そうだけど」
「…私の役目は戦闘じゃないから」

戦闘民族でも眷属器持ちでもない私は、普段王宮でぼんやり過ごしているだけ
一方両方担っているマスルールは、此処最近忙しそうだ
以前が八人将のわりには暇そうだったという考えもあるけど

「なんでアイツは頭悪いのに上手くいってるのよぉ…」
「確かにヤムライハよりは悪いけど、そこまで酷くないから」
「獣の脳味噌してそうだよね」

人の恋人を寄ってたかって言いたい放題である
これ以上飲んでいても話は弾まなさそうだし、ちょうどやってきたシャルルカンに世話を押し付けて王宮へ帰った
部屋に戻る途中屋根上に人影を見つけて立ち止まる

「マスルール!」

夜だから少し控えめに叫んでみると、案の定本人が顔を出した
どことなく焦点が合ってない
またあんな所で寝てたのか

「寝てた…?ごめん、用は無いから寝てていいよ」
「…」

人が気を遣ったのに無言で降りてきた
地面が少し歪んだと思う
まだ眠たそうな目でこっちを見てる

「…涎垂れてる」
「ああ…」

ちょいちょいと裾で拭ってあげる
それで目が覚めたのか軽々しく私を持ち上げた
いつものことなので気にしなくなったけど、壁や屋根を伝って私の部屋に窓から入る

「ありがと、おやすみ」

ベッドまで運んでくれたからお礼に頬にキスをする
と、物凄く不機嫌な顔になった
仮にも恋人に頬キスもらったんだから、嘘でも喜べ

「俺が起きたのに寝るんスか」
「私飲んできたから眠いし…もう一度寝ればいいじゃない」

それほど飲んでないつもりだったけれど、ベッドに横たわるとぽやぽやする
本当に酔うと脱ぎ散らかすらしいからまだ大丈夫
マスルールには悪いが今日はもう寝てしまおう

「…重い」

睡魔を吹き飛ばすほどの重みに目を開ける
わざとらしいまでにマスルールが私に圧し掛かってる
この体格と鎧の重みで洒落にならない

「潰れるっ、潰れるから、なんか出るから!」
「俺が起きたのに寝るんスか」
「分かったから…起きるよ、起きます」

体ばかり大きくなって、中身は子供みたいだ
抱きしめる形は変わらないものの軽くなった
弟子の修行はどう?と聞こうと目を合わせたら、妖しく光った気がした

戦闘民族でも眷属器使いでもないが
直感ぐらいは携わってる
腕の隙間から逃げ出すも、3歩目が地面に着くより早くベッドに引き戻された

「お酒飲んできたからダメだってば」
「気にしません」
「もうどうしてそう、本能に忠実なのかな」
「さあ…丸出しにしてないからじゃないすかね」

何ソレ、どういうこと
そう言うのが分かってたのか、先に唇を塞がれた
会うのも久しぶりなら、こっちも久しぶりだった

明日ピスティに会ったら否定しておこう
確かに獣みたいな脳味噌してるけど、だからこそ有り余ってるぐらいだって

「考え事、しないでください」









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