アラジン達がシンドリアから行ってしまった
淋しい、な。と独り言を呟く

「お?セレーナもしょげてんなー」
「シャルは平気なのね。私は無理…だって半年以上一緒にいて、妹や弟みたいで可愛かったんだもん…」
「別に平気っつーか、あいつらにはあいつらの道があるだろ?」

よしよし、なんて頭を撫でてくる
…口ではそう言っても、シャルも淋しいらしい
そりゃほぼ毎日稽古つけてた可愛い弟子がいなくなったら、そうなるよね

「―――あっ」

はっと気付いてシャルを見る
問う声を無視して、挨拶もせずに私は森へ走った
夕陽が沈み始めて鬱蒼とし出す木々の間を、アイツの姿を探しながら進んでいく

「いた、マスルール!」

1人ぽつんと木の幹に座ってパパゴラス達を眺めてる
傍に寄って見下ろすと、顔が此方に向いた

「…なんスか」
「ちょっと、ね」

アンタも淋しいんじゃないかって思って
という言葉は飲み込んだ
それぐらい、マスルールの瞳は淋しそうだったから

何も言わずに座ってやろうと屈んだ時、私の腕が引っ張られた
隣に座る予定がアイツの膝上に乗っかる
文句を言う気は、弱々しく回された腕のせいで無くなった

「おなか空かない?」
「全然…」
「そ。今日の晩御飯何かなぁ」

他愛ない会話を続ける
慰めに来たのに、少しずつ哀しくなってくる

おかしいね、マスルール
つい昨日までは此処にモルジアナがいて、私はアレが食べたいですとか、じゃあ明日昼食に持ってきてあげるねとか、俺は喉が渇きましたとか、声がもう1つあったはずなのに

王宮に帰れば嬉しそうな顔のアラジンが私に抱きついて、シャルから逃げるようにアリババがやってきて
皆で話しながら食事をとっていたのに

「…おかしいよね、もっと前はコレが普通だったのに」

アンタと私しか森にはいなくて
静寂がこんなに辛いとは思いもしなかった

「故郷に帰るって言ってた?」
「まあ…、けしかけたのは俺ですから…」
「あの子は1人で行くのかな」

知ってる?アンタが故郷を見たいと言った時
私は凄く怖かった。そのまま帰ってこないんじゃないかって
だから一緒についていったし、ずっとアンタの服の裾を掴んでた

そうでもしないとどこかに行ってしまいそうで

「どうなんスかね」
「居なかったってことは伝えた?」
「一応。それでも…モルジアナにはモルジアナなりの、理由があるんじゃないっすか」

あ。シャルと同じようなこと言ってる
男の子ってこういう時、少しばかり羨ましい
道を違っても、それはそれだと考えれる

私は駄目だな。一度得た縁を手放したくない
離れているととても不安になる

「また、会えるといいな」

ぽつりと呟いた声は酷く弱かった
会えるはずなんだ。あの子達は強いし、大丈夫

「…セレーナはどこにも行きませんか」

突然の言葉に驚いて顔を上げる
暫く考えてから、私は頷いた

「行く当てもないしね。それに私はシンドリアが好きだし」
「ならいいです…」

ほっとした表情
私は体を反転してその両頬に手を添えた
こつん、と額同士をくっつける

「私はアンタから絶対に離れない」

眼前にある赤い瞳がゆっくりと閉じていく
腰に置かれた腕の力が強くなっていった

淋しい夜は2人で居よう
半分こには出来ないかもしれないけれど、少しでも早く笑えるようになるはずだから










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