「宜しくお願いします!」
「…はあ」
椅子に座る。机の上に布を敷く
肘を置いて手を組み合う
ぐっと力を込めるけれど、微塵たりとも動かない
組んでいない腕で机の端を持つ
少し腰を浮かして体重をかける
それでもやっぱり動かない
「こら!何を遊んでいるんですか、仕事があるんですよ!」
「わわっ、ジャーファルさ…すみません!」
背後から叱り声が響いて振り返って謝り倒す
向き直って礼をして、手を離す
「ま、また明日お願いできますか…!」
「いいですけど…」
「有難うございます!それでは」
ばたばたとその場を後にして執務室へ向かう
顔が火照ってるのがよく分かる
組み合った手の感触を思い出して、ついつい表情が緩む
また明日、貴方とこうして組み合える
勝てることはないと分かっていても
あの数秒が幸せなんだ
(宜しくお願いします!)(はあ。あ、俺が勝ったら付き合ってくれませんか)(え?え、あっ)(…宜しくお願いします)