ちゅ、と軽く額にキスをする
嬉しそうに彼は笑って、もっともっととねだってくる
それが可愛くて私は何度もキスをする

「セレーナおねいさん好き!」
「私もアラジン君が好き!」

王宮に新しくやってきたこの子達は、素直で明るくて、とても可愛い
アラジン君はキスをするととても喜んでくれる
アリババ君はしどろもどろになりながら、顔を真っ赤にする
モルジアナちゃんはどうしたらいいのか分からないと、そわそわする

三者三様の行動が面白くて可愛くて
私は見かける度に時間があればこうしてキスを送る

「セレーナさん…」
「モルジアナちゃん!こんにちは、今日も可愛いね」
「あ…ありがとうございます」

私を呼びに来た彼女の額にもキスを送る
そわそわする姿も可愛らしい
用件を思い出したのか、はっとして来た方向を指差した

「マスルールさんが探してました」
「…?珍しい。じゃあ2人ともまたね」
「またね!おねいさん」

ばいばいと手を振って歩き出す
マスルールが人を使って人を探すなんて珍しい
大半は自分の嗅覚で探しに来るのに
ぼーっと座ってパパゴラスに餌をやる姿を見つけて近寄る

「何か用?」

此方に視線を向けたけど、すぐに外された
一向に喋らないから隣に座ってパパゴラスを眺める
何十分か経った時、ピスティとシャルルカンが通りかかった
素面でも絡んでくるのはいつものこと

「なにしてるの?」
「パパゴラス見てるの。ピスティこんにちは。シャルルカンも」
「おう、そういえばここ最近話はしてないよな」

久しぶりの挨拶に、2人の額にもキスをする
しばらく話をしているとジャーファルさんがやってきた
途端に2人は逃げ出したあたり、また何かしでかしたのだろう
ぜぇぜぇと息を切らしてジャーファルさんが立ち止まった

「お疲れ様です、ジャーファルさん」
「セレーナ…私にまでこうして口付けせずとも良いのでは?」
「習慣ですから。他には誰をお探しで?」
「急ぎではありませんが、ヒナホホ殿を見かけたら白羊塔まで伝えてくれますか」
「わかりました。ちなみに2人は多分食堂に向かいましたよ」
「そうですか、では!」

少し休んだらまたすぐ追っかけに戻った
また2人きりになって、静かになる
私も食堂に向かおうかと考えた矢先、マスルールが口を開いた

「アレって…習慣なんですか…?」
「キスのこと?私の民族では当たり前のことなんだ」
「はあ…そうすか」

額にキスは友好的な挨拶の印
スパルトスだけは母国の教えがあるから、キスはせずに普通に挨拶するけれど
それ以外の知り合いには基本的にしている

「用件ってそれが聞きたかったの?」
「いえ…あ、そうです」

今否定した。絶対否定した
少し距離を詰めて座る
マスルールの手にあった餌を貰ってパパゴラスにあげる

「あ、マスルールには今日してないね。こんにちは」
「…どうも」

横を向いて頬にキスを送る
初めてマスルールにした時と同じように
立ち上がって「食堂行くね」と声をかけて離れる
見えるけど、距離がある位置についてから振り返った

「頬はね、大事な人にしかしないんだよ!」

大声で叫んで私はその場を逃げ出した
驚いた顔をしてるかな。それとも訳が分からないって顔をしてるかな
貴方と知り合ったその時から、ずっとこの時を待ってたなんて知ったら、どういう顔をするんだろう









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