謝肉宴の時、シャルルカンがドラコーンさんに対して凄い発言をかましていた
あの時は「またあの人がやらかしてる」ぐらいにしか思わなかったけれど
今はどうしてあの時問い詰めなかったのかと後悔した

「どうしたんだマスルール。頬が腫れてるぞ?」
「はあ…気にしないでください、シン」
「相変わらずおかしな奴だなぁ」

はっはっは、と笑う声が傷を抉る
何を隠そうあの頬の腫れは私が叩いたものだから

付き合い始めて半年
子供じゃないんだからと周りに囃されながら、2人でのんびり過ごしてた
でもまあ、マスルールだってもういい歳なわけだし
私自身花も恥じらう乙女な時代は終わっているわけで

昨晩マスルールが躊躇いがちに言ってきたのをチャンスとしてみたわけです
乙女なんてどっかいったと思ってたけど、案外恥ずかしいと思いながら事を進めていた
ぼんやりと、獣みたいだなと考えてた私は、マスルールが衣服を脱いだ瞬間現実に引き戻された

無理だと何度断っても、どこで火がついたんだか強行突破に出ようとしたマスルールに、私が渾身の力を込めて平手打ちしたというのがこれまでのあらすじ

叩いた瞬間、やっちゃった!と思ったが、わりとケロッとしてたので大丈夫と安心してたら…
どうやら拗ねていたらしく頬の腫れを隠すことなく、わざと私の前でそれを聞かれるようにしている
性質が悪い。いっそしょげ返ってくれたほうが有難い

「おや、マスルールその腫れ…」

ああもう次から次へと!シンドリアは本当に平和で何よりです!
最初に会ったピスティを皮切りに、シャルルカン、ヒナホホ、ヤムライハ、シン…そしてジャーファルさんと続々と聞いてくる
このままでは八人将全員が聞きに来るに違いない
私は溜息を吐いてジャーファルさんのもとからマスルールを引き離した

「昨日のことは悪いと思ってるの。ごめんなさい。だからもう嫌がらせはやめて…」
「…?別に嫌がらせしてないです」
「無自覚なら尚更恐ろしいまでに嫌がらせだよ、それ」

素直に謝ったというのにこの仕打ちは酷い
でも、マスルールの表情は本当に嫌がらせだと思ってなさそうだ
神様。私が嫌いですか?幸せな人間嫌いですか?

「じゃあそれ隠そう?見てて痛々しいし…」
「嫌です」
「なんでそうなるかな」

どうして断るかな。実はマスルール私のこと嫌いなのかな
無理矢理部屋に連れて行って、手当てでもしてやろうと思ったけど動かない
王宮の床がみしみしいってる
壊したら私が怒られるから、引っ張るのは諦めた

「そんなの丸出しにしてたら誰が見ても私が叩いたって思うじゃない!」
「実際に叩いたのはセレーナですし」
「そうだけど、そこは論点じゃなくてね…だから、っ、な、なに?」

昼間の王宮の廊下で私の服の襟元を肌蹴さしにかかる
首筋をすっと撫でられて、背筋に感覚が走る
とある範囲を円を描くように撫で続けている

「…マスルール?」
「俺にはコレ、付いてませんから」

そう言うと首筋から手を離した
踵を返して行ってしまう
撫でられた部分に手をあててみるけど、別にしこりがあるわけではない

廊下を歩く途中でまた頬について聞かれてるマスルールを連れ戻す気にもならず、私は部屋に戻った
鍵をかけて、水を張った器を覗き込む
髪と衣服を退けて首筋にあったモノは、強く付けられた痕

「もしかして…」

急いで部屋を出て探し回る
運良く見つかったけど、今度はアラジン君達に聞かれていた
顔が火照って逃げ出したいのを堪えながら叫ぶ

「マスルール!付けてあげるから、そっちは隠しなさい!」

振り返ったその顔が妙に勝ち誇ったような笑みだったのは、見なかったことにしてあげる









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