「あーっ」
「…あー…」

中庭で向かい合って座って私は下から覗き込む
じいっとマスルールの口内を見ると、軽く腫れている部分を見つけた

「んー…あるね、腫れ」
「…」
「閉じていいよ」

私は医者じゃないからその腫れが何かまで分からないけど
マスルールが医務室に行くのは嫌だと駄々を捏ねるから
そのくせ痛いから食べにくいと文句を言ってくるから
こうして今見ているわけです

「いつから痛いって言ってたっけ」
「多分2週間…」
「もう医者に診てもらいなさい。私じゃ治せないし」
「…」

お医者さんの何が不服なのか
眉間に皺を寄せて、物凄く嫌そうな顔をした
私はそれを真正面から見てわざとらしく溜息を吐いた

「ファナリスでも痛いモノは痛いでしょ」
「頑丈なんで」
「外側はね。内側は常人と変わらないんだから、ちゃんと診てもらって」

要らないプライドだけはちゃんと持ってるんだな
体勢を変えて私は芝生に寝転ぶ
空には雲が浮かんで、ゆっくりと流れてる
視界の端でマスルールが動くのが見えた

「…なに?」

青空を打ち消す赤い髪
それが消えたと思うと、腕が私を抱え上げて膝の上に向かい合わせに起こされた
一応言っておくけど今はまだ勤務中で、中庭周囲の廊下には人がまばらにだが居るんですよ

「恥ずかしい。早く医者に行ってってば」
「一緒に、とか」
「子供ですか。私は仕事おさぼりして来てるので、無理」

帰ったらきっと怖い顔したジャーファルさんにめちゃくちゃ叱られるんだぞ
とはいえ、2人でまったりしてるの嫌いじゃないから、サボりの誘いを断らなかったんだけど

でもいい加減帰らないと
断る私にマスルールはまた眉間に皺を寄せた
跡つくよ、と開いた唇をマスルールが強引に塞ぐ

「ん…っ」

覆い被さるように抱きしめられ、逃げ場を無くされる
逃げる気なんてこれっぽっちもないけど
無理矢理キスされるのは今に始まったことじゃないから好きにさせていると、口内に舌が入ってきて私は目を見開いてもがいた

「ぇ、っふ…ぁっ」

突然すぎて息継ぎが上手くできず、酸欠になりかけて慌てて肩を叩いた
苦しいと意思表示すればあっさり解放される
深呼吸を繰り返してから私はマスルールの頬を抓った

「ばっか!」
「はあ……あ、」

抓られてるのに全然痛そうな顔をしない
それどころか上を見て暢気に指差してる
手を離して私も見ると、呆れた顔のジャーファルさんがそこにいた

「うわっ…今戻ります、すみません!」
「…もう2人で医者に行ってもらっていいですよ」
「あ、もう治ったんで平気です」
「「えっ、嘘!?」」








誤字脱字、コメント等ありましたらどうぞ


(次ページに小説はありません)


「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -